悪性スリヴァー/Virulent Sliver

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Card of the Day -今日の1枚- 2015/10/22

悪性スリヴァー/Virulent Sliver

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プロツアーというのは、何かが起こる場所。最初のプロツアー、ニューヨーク96から20年近く続いてきた戦いの歴史。その1つ1つで、それまでの常識が覆されてきた(戦前予想そのまんまな時代もあったが、まあそれはそれ)。勝者にもドラマはあるが、敗者もまた然り。マジックは時に残酷な評決を下す。誰だって勝ちたいが、どうしようもない敗北というものも存在する。

 

《悪性スリヴァー》も、そんな非情な現実を叩きつけた1枚である。『未来予知』の通称"未来枠"に属するこのカード。

 

未来枠とは、発売当時のマジックには存在しないキーワード能力を持っていたり、異質なデザイン、初登場の固有名詞といった、近い将来マジックの世界に訪れるかもしれないカード達を「先行再録」したという、実験的なカード群である。

 

《タルモゴイフ》や《墓忍び》が有名で、そのクールな枠デザインで人気も高い。正式にはタイムシフトというグループに属しているが、『時のらせん』『次元の混乱』のそれと区別する意味合いで、このカードの枠をグループの呼称として用いることが多い。

 

《悪性スリヴァー》もそうした未来な要素を持っている。スリヴァー自体は『テンペスト』から存在する古き歴史ある種族だが、このカードはその共有する能力が未来のもの。"有毒1"。

 

この能力は、スリヴァーがプレイヤーに戦闘ダメージを与えるたびに、ダメージとは別で毒カウンターを1個プレゼントするというもの。ダメージ、ライブラリーアウト、特殊勝利条件...らに並ぶマジックの勝ち手段の1つ、毒殺を行うのだ。

 

プレイヤーは毒カウンターを10個得るとゲームに敗北する。このスリヴァーの場合、パワーは1だが10回殴るだけでプレイヤーを仕留めることが出来る。...これだけ聞くと、何かを思い出すはず。

 

そう、『ミラディンの傷跡』で登場した"感染"だ。ダメージを毒カウンターという形で与える感染持ち達は、未だにレガシーでも有力デッキの1つとして活躍していたりする。純粋にパワーが2倍だからね。その感染と比べると、有毒1はパワーがどれだけ上がろうが1つしか毒を与えることが出来ない。この有毒をベースに、よりわかりやすくまた現実的に調整されたのが感染なのだろう。

 

一見感染の下位互換に見える有毒だが、これがなかなかどうして強力で...。感染と違って、この能力は複数を同時に持つことが出来る。《悪性スリヴァー》が2体並ぶと、お互いに能力を与え合ってその能力は「有毒1、有毒1」という状態になる。これを活かして、《悪性スリヴァー》を複数同時に並べて殴るデッキが作られた。

 

それが...かの極悪デッキ「ハルクフラッシュ」だ。コンボパーツであるスリヴァーを素引きしても、とりあえず1マナだし出してコツコツ殴ればOK。なんだったらそのままクロックパーミみたいに動いてコンボせずに勝ってしまうことも。ガッデムなデッキであったなぁ。

 

さて、プロツアーの話をしようじゃないか。プロツアーサンディエゴ07、双頭巨人ブースタードラフトで行われたこのトーナメントの決勝ドラフトにて、アメリカのプロツアー初出場の二人組はスリヴァー決め打ちを慣行。これが成功し、彼らの手元には溢れ返らんばかりのスリヴァーが。そして準決勝で、それらが毒牙を剥く。

 

1ターン目《悪性スリヴァー》→2ターン目《悪性スリヴァー》→3ターン目《紡績スリヴァー》《陰影スリヴァー》→4ターン目《悪性スリヴァー》、《陰影スリヴァー》への除去を《一瞬の瞬き》で回避してシャドー毒殺!双頭巨人戦は一本勝負なので、4キルでゲームセット!

 

プロツアー決勝ドラフトで、プロツアーの歴史上初の毒殺が4ターンで決まる...このマジックの歴史上語り継がれる、ある意味名誉ある敗北を経験しているのが、皆もよく知るあの人だよ。ほら、公式の...かね(このコラムはここで終わっている)


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