『統率者2015』プレビュー 《霊気奪い》

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2015.10.30

「青」という色。マジック:ザ・ギャザリングを形成する、5つの色の1つ。この色は、そのマナシンボルが示す通りの水は勿論、そこから派生した大気や氷の魔法の色。それらを操る魔導士や、それらにより作られたクリーチャー達、水のある環境に住まう水棲生物らを召喚し戦う色である。これらの水にまつわるものと、もう1つ大きな概念を青は担っている。それは...精神と、それに基づく知識・知覚・記憶。青をマナを媒介として唱えられる呪文は、これらに干渉できる。敵の精神を操作し、自らの知覚を研ぎ澄まし、過去の記憶を呼び覚ます。青はこれらの力により、対戦相手のクリーチャーのコントロールを得たり、カードを引いたりする。

特に相手のものを奪うのには長けた、他の色とは桁違いの狡猾さを武器とする色だ。最近では赤にその特性を奪われつつあるが、依然としてトリッキーさでは青が勝っている。赤は一時的にクリーチャーを奪うが、青は永続的にそれを従える。何せ『アルファ』の頃から今日まで奪って奪って奪い続けてきたのだ。年季が違うんじゃ。

 
また、奪えるものはクリーチャーに限らない。エンチャントやアーティファクト、土地さえも支配する。精神に作用する魔法の応用...なのだろうか。権謀術数を活かして政治的にそれらを手にするカードもあって、デザインを見ているだけでも実に面白い。実際にそれで相手の戦力を奪うのは、もはや愉悦。

 
青らしい狡猾さに満ちたカードと言えば、打ち消し呪文も忘れちゃいけない。青と言えば、カウンター。降りかかる脅威を未然に防ぐことが出来るこの系統の呪文には古くからファンが多く、事実強力無比なものが多数存在する。今日では、レガシーやヴィンテージでその強力さを体感することが出来るだろう。最新のエキスパンションに含まれるものは、いずれも過去のものよりはマナコストが重くなり軒並みパワーダウンしている...が、打ち消し以外の効果も付与されたものはスタンダードやモダンなどでしっかりと活躍している。

 
さて、本題に入ろう。2015年11月13日に発売される『マジック:ザ・ギャザリング ― 統率者(2015年版)』(以下『統率者2015』)。このシリーズも気が付けばもう第4弾。楔3色・タルキールでいうところの氏族カラーで構成された『統率者』は、それまで見たこともないデザインの伝説のクリーチャーや、レガシーで活躍するハイスペックな新規カード・懐かしくまた強力な再録カード群と、ワクワク要素がてんこ盛り。続いて2年後に登場した『統率者2013』はアラーラにおける断片カラーで構成され、統率者戦ならではの領域やルールを利用したカードが多数登場。『統率者2014』ではクリーチャーでなくても統率者に使用できるプレインズウォーカーが主役と、それぞれのセットで進化を続けてきたこのシリーズ。今作では所謂対抗色と呼ばれる2色の組み合わせのデッキが5種類登場。...もう、多色化が進んだ現代マジックでは、どの色の組み合わせも有効色みたいなもんですけどね。個人的には緑黒・ラヴニカで言うところのゴルガリ信者なのでそれらの新カードが楽しみだが...今回のプレビューは上述からも分かる通り、青くてコントロールを奪って、打ち消し呪文的でもある1枚。

Ladies and Gentlemen, Here comes 《Æthersnatch》!!

 
今回BIGMAGICがご紹介するカードは《霊気奪い》!青い、実に青い呪文だ。呪文を対象とするため、そのカードが唱えられスタック上にあり、まだ解決される前にしか使えない。即ち打ち消し呪文のように構えて使うタイプのもので、その効果も相手から呪文を奪うという実質打ち消しのような呪文...厳密にいうと打ち消し呪文ではないけども。
「呪文1つを対象とし、それのコントロールを得る。」
このシンプルな文言の美しさよ。かつて、これとよく似たカードがあったことをご存じだろうか?

 


『コールドスナップ』の《徴用》は、クリーチャー以外の呪文を奪うものだった。手札の青いカード2枚を追放してマナコストを払わずに唱えることが出来るが、通常のコストは7マナと重く、その点では6マナでクリーチャーでもなんでも呪文でありさえすれば奪うことのできる《霊気奪い》はかなり優秀だ。

 


さらに遡れば、《奪取》《呪文乗っ取り》も近いカードだ。《奪取》は5マナと軽めだが、奪うことに関してはクリーチャーとアーティファクト限定の打ち消し呪文。《呪文乗っ取り》はこの呪文と最も近いものだ。6マナで何でも奪うことが出来る。このカードの現代リメイク版と言ってもよいだろう。
これらの古き時代の呪文に言えることは、どちらも1度打ち消してからそれらを自分で使うことが出来るという点。即ち、打ち消されない呪文達には太刀打ちできないのである。《魂の洞窟》などを用いて打ち消し呪文から統率者を護りながら唱えられたりすると、お手上げなのである。その点、解決される前の呪文をそのままいただく《霊気奪い》は優れていると言える。

自身のクリーチャーに飛んできた除去を相手のそれにはじき返したり、手札破壊やコンボのフィニッシュ部分をおいしくいただいたり、いろいろと悪さのできそうな呪文である。弱点としては、コントロールを奪うことに意味がない呪文には無力ということだろうか。《神の怒り》のコントロールを奪ったって、結局自分のクリーチャーは流れてしまう。その点では、前述の一旦打ち消す組の方が有用だったりする。まあそれでも基本、ダブルシンボルで何でも奪えるこの呪文に軍配が上がるだろう。相手が渾身のX=40で撃ち込んできた《火の玉》とか奪って打ち返したら相当気持ちいいことだろう。その時は静かに、このカードのフレイバーテキストを声に出して...

「何を言おうとしてたの?」

アカーン!喧嘩なる!例え身内でも煽りはほどほどにして、健全な統率者ライフを楽しみましょう!