RPTQ Round1 西村 幸峻 (イエローサブマリン 福岡天神店) vs 松本 友樹(プロレベル シルバー)




10月31日。

制度改定より、2回目のRPTQ開催となりました。
前回は"8人抜け"の参加人数に達するかどうかが注目されましたが、
海外勢の参加もあって、無事128人を超えました。

 今回は予約の段階で140人を超えたこともあり、
何人抜けるかよりも誰が抜けるか、に注目が集まっているように感じます。

 特にシルバープロとしてRPTQ参加を予約させていた
瀧村和幸選手、玉田良一選手がプロツアーでの1・2フィニッシュ、
そして井川良彦選手がグランプリで好成績を収めて
結果RPTQ参加の必要性(と権利)を失ったことは、日本勢にとっても喜ばしい報せです。



一躍プラチナプロとなった瀧村選手の後ろを追うのは、
彼と同じくBIGMAGICがスポンサーする松本 友樹選手。

遠路、福岡からプロツアーを目指しにきた西村選手との緒戦となりました。


Game 1

先手を獲得した西村選手は、モダン黎明期からトップメタに位置し続けるジャンド(赤黒緑)ミッドレンジを使います。
《ヴェールのリリアナ》を始めとしたハンデスを《闇の腹心》のドローソースでアドバンテージを一方的なものとし、《タルモゴイフ》《漁る軟泥》というパワー・アタッカーで速やかにゲームを決めるモダンきってのなんでも屋です。

プレイヤーとして、そしてデッキビルダーとして名を馳せる松本選手は、
モダンの軸とも言えるジャンドを相手に、どんな展開を魅せてくれるのでしょうか。

西村選手の
《闇の腹心》《タルモゴイフ》《オリヴィア・ヴォルダーレン》そして3枚の土地を暴いたのは、
《沼》から《思考囲い》を後手1T目に打った松本選手。
《闇の腹心》を捨てさせて、後手のハンドアドバンテージを保ちます。

そのまま西村選手は予定調和的な《タルモゴイフ》プレイに続き、
トップ・ドローをしてみせた《ヴェールのリリアナ》を着地させます。
松本選手の《ヴリンの神童、ジェイス》をそのマイナス能力で対処すると、
サイズアップした《タルモゴイフ》を快適にレッドゾーンに走らせます。

松本選手は2枚目の《思考囲い》で《オリヴィア・ヴォルダーレン》を食い止めるものの、
盤面に触れる手段は乏しい様子。



西村選手がその隙をつく《コジレックの審問》をプレイしました。
公開は《けちな贈り物》《台所の嫌がらせ屋》《突然の衰微》と土地。
《けちな贈り物》にはマナが足りず、
先ほどの《思考囲い》プレイはマナ基盤的に《台所の嫌がらせ屋》プレイとのトレードオフだったようで、セットランドからは見えてない4色目の緑マナを要求する《突然の衰微》が唯一盤面に触るカード、という様相です。
《ヴェールのリリアナ》のプラス能力と合わせてハンドを《けちな贈り物》1枚にしたところで
西村選手の場に《オリヴィア・ヴォルダーレン》が追加され、
松本選手のメイン・デッキのうちには《オリヴィア・ヴォルダーレン》《タルモゴイフ》《ヴェールのリリアナ》という3方向からの攻め手を一気にいなせるカードを見つけられませんでした。

西村選手 1-0 松本選手


Game 2

西村「何が飛び出してくるか分からない」
松本選手のデッキビルド能力は、インターネットを介して九州にも知れ渡っていました。

《強情なベイロス》《終止》《漁る軟泥》、土地4というハンドをキープした西村選手。
中盤以降のハンデス、リアクション、序盤のプレッシャーと揃っています。

松本選手は《ヴリンの神童、ジェイス》《屈葬の儀式》《台所の嫌がらせ屋》、土地3の1マリガンでゲームを開始します。
ゲームの初動はこの《ヴリンの神童、ジェイス》となって、
リアニメイトのパーツにもなりつつデッキを円滑に回す予定でしたが、
西村選手がトップドローしていた《稲妻》で1度もルーティングさせずに弾きます。

それでも《台所の嫌がらせ》を展開して主導権を離さない松本選手。
西村選手の対抗は、マナさえあれば明確な頑強メタとなる《漁る軟泥》です。

これに続く動きのなかった松本選手に対して、
西村選手が能動的な選択肢を選ぶ場面になりました。

《終止》とウーズ能力で《台所の嫌がらせ屋》を対処するか、
《闇の腹心》展開でアドバンテージに繋ぎ、よりゲームを早めていくか。

《漁る軟泥》《闇の腹心》と並んだ西村選手の場を対処すべく、
松本選手は5マナ目にしてようやくのビッグ・アクション。



《白日の下に》をプレイします。

《けちな贈り物》と《屈葬の儀式》の"けちパッケージ"に
《白日の下に》は同じく1枚挿しを探せつつ、追加の《けちな贈り物》にもなるので、
非常に噛み合いの良い『戦乱のゼンディカー』からの新カードです。

赤のない収斂=4のサーチ・アンド・プレイ・カードが持ってきたものは、
このままではゲームを決めてしまう《漁る軟泥》を確実に対処する《突然の衰微》。

《強情なベイロス》で戦線を維持する西村選手。
ハンドに追加の《漁る軟泥》、《終止》、《大爆発の魔道士》を抱えながら、
《怒り狂う山峡》と《強情なベイロス》でライフレースを図ります。

《流刑の道》で《強情なベイロス》を退けた松本選手は
《怒り狂う山峡》も《台所の嫌がらせ屋》でブロックすると、
ライフと展開に一旦猶予を得たなかでエンドに《けちな贈り物》をプレイ。

探したカードは《太陽のタイタン》と《エメリアの盾、イオナ》のみ。
これで確実にこの2枚は墓地に落とされる為、2倍《納墓》としての活用法であり、
続くメインに《エメリアの盾、イオナ》を《屈葬の儀式》で釣り上げます。

プレイを禁止する色の指定は、黒。
《終止》と《ヴェールのリリアナ》を止めて直接の対処をされにくくする指定は、
《大爆発の魔道士》や《コラガンの命令》を引き込んでいた西村選手に大打撃の様子。
7/7 飛行という天使の巨躯アタックを3度は受け止めきれませんでした。

西村選手 1-1 松本選手


Game3

先手の西村選手は《終止》《闇の腹心》《大爆発の魔道士》という絶好の先手ハンドをキープ。
松本は《思考囲い》でこれを暴き、《大爆発の魔道士》による機能不全を嫌います。
西村選手の《闇の腹心》プレイには即座に《突然の衰微》で回答。

しかしながら3T目、
西村選手は1度は墓地に送られたはずの《大爆発の魔道士》を引いており、着地させます。
《ヴリンの神童、ジェイス》に《稲妻》を合わせて、
《大爆発の魔道士》を唯一のクロックとして運用します。
その"爆発"の猶予をついた松本選手、4マナに到着して《けちな贈り物》をプレイします。

4枚は《太陽のタイタン》《屈葬の儀式》《スラーグ牙》《白日の下に》。
どれもエンドカードというよりもむしろアドバンテージを取りに行く側面が大きい4枚で、
《けちな贈り物》の真骨頂とも言えるプレイ方法とも言えるでしょうか。
負けないための4枚。《白日の下に》と《屈葬の儀式》が墓地に送られます。

アップキープに《大爆発の魔道士》で土地4枚目の《繁殖池》を割り、
メインでの5マナからの《スラーグ牙》に辿りつかせない西村選手。
セットランド4マナからの松本選手のプレイは、現代の《スラーグ牙》ともいえる《包囲サイ》。
プレッシャーをかけ続けます。

西村選手、ここで《漁る軟泥》をプレイし、
《ヴリンの神童、ジェイス》と《屈葬の儀式》を食べていきます。

《包囲サイ》と《漁る軟泥》の何度かの殴り合いが続いたあと、
松本選手の《けちな贈り物》が再び西村選手の目前に選択肢を突き付けます。

《島》、《大渦の脈動》、《突然の衰微》、《流刑の道》。
《島》は実質《スラーグ牙》に繋がるカードであり、
4マナと詰まっているところに渡すには単なる土地とは言い難い重要な1マナ。
ディスカードは《島》と《流刑の道》。

《包囲サイ》と《漁る軟泥》をお互い除去し合って
勝負は再び松本選手が土地を引くか
その前に西村選手がプレッシャーをかけてゆけるかにかかってきました。

松本選手がさきに念願の土地を引き込み、《汚染された三角州》を起動。
―…しかし《島》も《沼》も既に1枚ずつ消費しており、
ここでショックランドを2点ペイするとライフが丁度3となるため、
《稲妻》が合わさることを回避して《神聖なる泉》をサーチ・タップインして次ターンに持ち越します。

その1ターンで西村選手が引いたのは《タルモゴイフ》。サイズは4/5。
《スラーグ牙》と睨み合う盤面では余りにも5/6との差が大きい。

松本選手が続けて《太陽のタイタン》を着地させ、
《ヴリンの神童、ジェイス》を復活させると
実質的に墓地に落ちた《けちな贈り物》を含む全ての呪文が次ターンの有効牌となり、
西村選手のジャンドに盤面全ての脅威を対処できるトップはなかった。

西村選手 1-2 松本選手


松本選手 Win!

ジャンドとの消耗戦を制したことで
実質的に非常に多くのフェアデッキともやりあえることを証明し、
《けちな贈り物》+《屈葬の儀式》+《エメリアの盾、イオナ》の「けちパッケージ」と
《白日の下に》+《包囲サイ》の「《白日の下に》コントロール」、
その他にも1枚挿しを採用しやすいツールボックス(サーチ型)デッキならではの
シナジーカードを組み合わせた松本選手のコントロールデッキがお披露目となりました。

同じくエスパー(白青黒)カラーを擁しながら
《未練ある魂》+《僧院の導師》の「エスパー・メンター」とは大きくアプローチの異なる新作デッキ。

松本選手を今再びプロツアーの舞台へ引き上げる「快心の作だった」と後に言える
新しいアーキタイプとなるでしょうか。