BIGMAGIC契約プロプレイヤー・松本友樹の体験した「ヴィンテージ」
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お久しぶりです。
初めて見て下さった方ははじめまして!
前回の記事から相当間が開いてしまいまして、私がどんな人かを忘れてしまった方もいるかと思います。
ですので、本題に入る前に簡単に自己紹介をさせて頂きます。
私はBIGMAGIC所属プロとして活動している松本友樹と申します。
「Aさん」「ハーレー」等のあだ名もあったりします。
主な実績はグランプリ千葉2015優勝、プロツアー『マジック・オリジン』23位。
アピールポイントとして、オリジナルなデッキを構築するのが好きというものがあります。
大会に参加するたび、自作のデッキを持ち込んでいます。
なので今回参加したヴィンテージ神決定戦でも自作デッキを・・・と思ったのですが。
実は私、ヴィンテージ未経験者です。
フリープレイや対戦の様子すら見たことが無く、今回の神挑戦者決定戦が正真正銘のぶっつけ本番になります。
らに重ねると、ヴィンテージのまともな知識もありません。
ヴィンテージと聞いて思い浮かべる事といえば...
・1ターン目に《磁石のゴーレム》や《抵抗の宝球》等が出てきてロック。次のターンにも追加の置き物が出てきて実質ゲームエンド
・1ターン目に《荒廃鋼の巨像》が出てきて対処できなければ死亡
・物凄い勢いでバンバンスペルを唱えてストームで1キル
・そのほか、何か良くわからない凄いことが起こってゲームが終わる
こんなイメージです。
そう、長い歴史を誇るMTGのほぼ全てのカードが使用可能であり、名高き"パワー9"やそれに匹敵するパワーカードが跋扈する魑魅魍魎が住まう阿鼻叫喚の世界。
それが、私のヴィンテージのイメージです。
そんな所に、何も考えずにのこのこと《コジレックの審問》と《定業》を携えて行こうものなら一瞬で0-2ドロップは必至。
という事で参加を決意した神決定戦の5日前、オリジナルデッキを持っていくのはあまりにも危険と判断しました。
せめて自分でも扱えそうなデッキをコピーしてみて、それをちょこっといじくるくらいにしよう・・・と決意しました。
1.デッキについて
という事でデッキができました。
(ヴィンテージ神決定戦 トップ8デッキリストから引用)
「メンター」 松本友樹 ヴィンテージ神決定戦準優勝 |
16land 1 《島》 3 《Tundra》 2 《Volcanic Island》 3 《霧深い雨林》 3 《汚染された三角州》 2 《溢れかえる岸辺》 2 《沸騰する小湖》 7creature 4 《瞬唱の魔道士》 3 《僧院の導師》 37spell 4 《剣を鍬に》 4 《ギタクシア派の調査》 4 《精神的つまづき》 2 《狼狽の嵐》 1 《Ancestral Recall》 1 《渦まく知識》 1 《定業》 2 《Mana Drain》 1 《Time Walk》 4 《Force of Will》 1 《時を越えた探索》 1 《宝船の巡航》 1 《Black Lotus》 1 《Mox Jet》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Emerald》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Pearl》 3 《ダク・フェイデン》 2 《卓絶のナーセット》 sideboard 3 《封じ込める僧侶》 3 《摩耗+損耗》 3 《貪欲な罠》 1 《スレイベンの守護者、サリア》 1 《狼狽の嵐》 1 《光輝の炎》 1 《精神壊しの罠》 1 《至高の評決》 1 《ダク・フェイデン》 |
基本的には一般的な「メンター」と同じです。
とはいってもヴィンテージの一般的な「メンター」がそもそもどんなものか、わからない方が多いかもしれませんね。
現ヴィンテージ神の森田 侑さんが使われた「メンター」が、私の思う基本的な「メンター」像です。
「メンター」 森田 侑 ヴィンテージ神決定戦優勝 |
16land 2 《島》 3 《Tundra》 3 《Volcanic Island》 4 《溢れかえる岸辺》 3 《沸騰する小湖》 1 《Library of Alexandria》 7creature 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 1 《瞬唱の魔道士》 4 《僧院の導師》 37spell 4 《精神的つまづき》 4 《定業》 3 《剣を鍬に》 1 《Ancestral Recall》 1 《渦まく知識》 1 《思案》 1 《狼狽の嵐》 1 《撤廃》 1 《紅蓮破》 1 《解呪》 1 《Time Walk》 1 《火+氷》 4 《Force of Will》 3 《噴出》 1 《時を越えた探索》 1 《宝船の巡航》 1 《Mox Pearl》 1 《Mox Ruby》 1 《Mox Sapphire》 1 《Mox Emerald》 1 《Mox Jet》 1 《Black Lotus》 2 《ダク・フェイデン》 sideboard 3 《封じ込める僧侶》 2 《紅蓮破》 2 《安らかなる眠り》 2 《静寂》 1 《平地》 1 《剣を鍬に》 1 《突然のショック》 1 《至高の評決》 1 《墓掘りの檻》 1 《石のような静寂》 |
その基本形と私のものとの差異はいくつかありますが、その中でも私自身が大きな差異だと思う部分を解説してみたいと思います。ちなみにですが、以下の解説は私がヴィンテージ神に参加する前のイメージに基づいて決めたポイントでもあります。
現実に即してない可能性もありますのでご注意下さい!ちなみに、少々長くなる上に完全にヴィンテージ素人の意見ですので、読み飛ばしてくださっても大丈夫です。
・《Library of Alexandria》の不採用
これには2つ大きな理由があります。
まずは当然ですが、色マナの都合。
土地の配分について見て下さるとわかるのですが、実は相当にぎりぎりです。
青マナが16
白マナが13
赤マナが12
そして、《Library of Alexandria》(以下アレキサンドリア)入りの森田さんは
青が15
白が11
赤が11
期待値では初手にこれらが1枚以上ある可能性の方が高いのですが、白・赤の両方を揃えるには安心できる数値ではありません。
フェッチランドは(デュアルランドをサーチして)3色ランドにカウント出来るとはいえ、実際にこのカード1枚で生み出せるのは2色です。
初手にフェッチランドが2枚あれば良いものの、《島》orアレキサンドリア+フェッチランドという初手では非常に不安があります。
また、土地の枚数事態も非常に抑えられているのがヴィンテージです。3枚土地を引けばほぼ間違いなく2色を揃えることが出来ますが、土地1枚+モックスなんて手札をキープする必要もあるでしょう。1枚は誤差といえばそうかもしれませんし、そもそも《島》をフェッチランドにすれば良いという意見もあるかと思います。
しかし、ゲームをする上で基本土地1枚はデッキに欲しいですし、モックスの枚数を考えれば純粋に土地の枚数を増やすというわけにもいかないのです。勿論ですが、アレキサンドリア1枚をフェッチランドにしたからといって、数値が目に見えて大きく変化するという事ではありません。ありませんが、タダでさえ無色の土地として色が合わないモックスが入っているのに、加えて無色土地を採用するのは不要なリスクを生みやすいと判断しました。
さらに付け加える理由として、私のデッキにはダブルシンボルが多いというのもあります。
《瞬唱の魔導師》はほぼダブルシンボル以上、《卓絶のナーセット》と《ダク・フェイデン》も(唱えるのにデュアルランド2枚が必要なため)実質青青のダブルシンボルです。その上で《Mana Drain》も入っていますし、通常のタイプよりもかなり色マナにシビアになっていますね。
もう1つの理由としては「アレキサンドリアそのものに大きな魅力を感じなかった」という事です。
当然ですが、ヴィンテージは各種モックスと《Black Lotus》の存在から1ターン目に大きなアクションを取りやすいゲームです。その為1ターン目にいきなりクライマックスを迎えるという事もありますし、仮に1ターン目に一切動けなければ2ターン目には取り返せないほどの差がつくこともあります。だからこそ《Force of Will》や《精神的つまづき》が強いのですが...アレキサンドリアは最初のターンに動く=手札を消費すると、カードを引くことが出来ません。
そして一度能力を使うタイミングを逃すと、もうそのゲーム中に能力を使う機会が来ることは殆どありません。お互いにドローゴーを繰り返すゆっくりした展開であれば、まさにゲームを決めるカードになるかと思います。ですが、そうなる事は殆ど無いのではないかという予想を持っていました。
という事で、アレキサンドリアよりフェッチランドを多く採用している方が有利、という判断から不採用となりました。
・《ギタクシア派の調査》の採用
このカードを採用した理由はとても単純で、ヴィンテージに不慣れな私は下手なことをして死にそうだと思ったからです。
・・・それだけだとあまりに情けないので、もう少し言葉を足して言いますね。
《Force of Will》は強力なカードです。
相手のコンボを防ぐには無くてはならないカードですし、手札を追放するという手痛いコストも《Black Lotus》から繰り出された大物を打ち消せば2:2交換で五分になります。このカードの存在によって、青相手には例えフルタップであってもカードをプレイしにくくなりますね。
しかし、これはただ強いというだけのカードではありません。
これをもって何を打ち消すかというのは難しいもので、例えば《Ancestral Recall》なら何も考えず打ち消すで間違ってはいないでしょう。しかし、キャストされたのが《Black Lotus》だったら・・・基本的にはロータスの後に出された物を打ち消したいと思いますが、黒マナを生みだされてハンデスを撃たれ、その後からストーム・・・なんて可能性もあります。
あるいはそこから《魂の洞窟》セットで《磁石のゴーレム》かもしれませんね。
《Force of Will》を用いて、《Black Lotus》から繰り出されるカードを打ち消すか、それそのものを打ち消すのか。そもそも正しい知識と経験があれば、この読みの精度はかなり改善できるのでしょうが、その両方を持たない私にとって、この《Force of Will》というカードは使わなければならないにしろリスキーなカードになってしまっています。
そこで、1ターン目にまずは相手の手札を見て脅威を確認する事で、こういう強力なカードの本来の力を発揮させることが出来ます。
さらに、このデッキは《僧院の導師》、ダク、ナーセットといった大きなアクションのカードが多く入っています。カウンターを構えるべきか、カウンターを持っているフリをすべきか、それとも積極的にこれらのカードを出すべきか。そういった判断を間違えること無く行えるのも、勝率の上昇に大きな貢献を果たします。
ヴィンテージ初心者の私にとって、このカードは無くてはならないカードであるのは間違いありません。
・《ダク・フェイデン》の増量、《卓絶のナーセット》の採用
どちらも「メンター」に採用される可能性のあるカードです。
ダクはメインサイド合わせて2枚程度、ナーセットも1枚使われることがあります。どちらも非常に強力なので、何故どのデッキでも枚数が抑えられているのか不思議に感じました。
まずダクについてですが、こちらは書いてある事全てがヴィンテージにおいて強力です。
2枚目以降を引いてしまっても自分の能力で入れ替えられるため、メインボードから複数毎入れても全く問題無いのではないかと思っています。青いので《Force of Will》で追放できますしね。ナーセットは《精神を刻む者、ジェイス》と比較されるもので、こちらは一概にどちらが上とは言えません。ジェイスは1枚で完結しており、安定した強さがあります。
ナーセットはゲームに勝利できる大マイナス能力までの早さ、そして-2能力が扱える際の強力さが魅力です。
単体のパワーはジェイスが上回ることが多いかと思いますが、"反復"できた際のリターンと着地した際のプレッシャーが大きいため、最大値はナーセットの方が高いと考えています。《紅蓮破》や《赤霊破》が全体的にあまり使われていないので、1枚で破壊されないのであれば忠誠値の高さが活きるというのもありますしね。
という事で、今回ダク3枚ナーセット2枚をメインボードに採用しました。
2.ヴィンテージ神決定戦スイスラウンド
それまで、日本国内のヴィンテージの大会での最高参加者数は50人前後だそうです。
ところがこの大会では、その最高記録を倍以上も上回り更新する、122人の参加者が集まりました。
参加者の皆さんもびっくりされていましたが、スタッフの方々も驚かれていましたね。当日の参加者に配布していた参加証が足りなくなって急遽追加生産されていました。それだけ多くの方が、このすさまじい環境をやっていると考えると凄いですよね。
ちなみに会場にはあの八十岡翔太さんや中島主税さん、高橋優太さんら晴れる屋Prosの面々がいらっしゃいました。知っている方がいて良かったとほっとする一方、BIGsは誰もいなくて寂しかったです。皆さん、読んでいたら次は是非!
前フリが長くなってしまいましたが、いよいよ待ちに待ったヴィンテージ体験の開幕です!
1回戦目:「茶単」 ×○×
2回戦目:「ゴブリン」 ×○○
3回戦目:「オース」 ○○
4回戦目:「グリクシスバーン」 ○×○
5回戦目:「マーフォーク」 ○○
6回戦目:「親和」 ○○
7回戦目:「スゥルタイ(墓荒らし)」 ○○
対戦順番はちょっと間違えてしまっているかも知れませんが、概ねこんな感じでした。
6-1で、シングリイルミネーション進出です!
そちらについて書く前に、衝撃的だった体験について書きたいと思います!
まず1回戦目、vs「茶単(MUD)」です。
いきなり負けました。
それも、まさにザ・ヴィンテージ!という相手でした。
皆さんご存知かも知れませんが、《Mishra's Workshop》(以下ワークショップ)というカードがあります。
僕はこのカード、てっきり制限だと思っていたのですが、なんと4枚フルに使えるみたいで・・・1ゲーム目、2ゲーム目はこのカードはプレイされませんでしたが、それでもぎりぎりの勝負でした。そして3ゲーム目、とうとう使われてしまいました。
相手の先手です。
1ターン目:ワークショップ、ロータス、《磁石のゴーレム》、《抵抗の宝球》
2ターン目:ワークショップ、《磁石のゴーレム》2号機(《ファイレクシアの変形者》でコピー)。
3ターン目:《からみつく鉄線》
まさに!まさにヴィンテージ!
カードを引いて土地を置く以外の動作が出来ずにゲームが終わってしまいました!
これに勝つには《Force of Will》が初手に無いと駄目という、まさにイメージしていたヴィンテージ!
試合に負けた後も、あまりの衝撃に「ヴィンテージすげぇ・・・」としか言葉が出てきませんでした。まさか1ターン目に3マナ出るワークショップが4枚使えるなんて・・・。
しかし、一方的にやられるだけがヴィンテージではありません!ぶん周りなんてあまりなさそうな私のデッキでも凄いことが出来ました。
4回戦目の「オース」戦1本目、先手です。
1ターン目:フェッチから《Tundra》、ロータス、《僧院の導師》、《Mox Sapphire》、《Ancestral Recall》でターンエンド。
相手ターン:《Force of Will》、《精神的つまづき》
2ターン目:《Time Walk》
3ターン目:《瞬唱の魔道士》から《Time Walk》
ヴィンテージ!凄い!相手にターン渡してはいるものの、基本どんなハンドでも無理!凄い!
これがヴィンテージ!
まだあります。今度は相手にやられた凄い動き編。
4回戦目のvs「グリクシスバーン」の2ゲーム目。相手が先手です。
1ターン目:《Badlands》、ロータス、《大歓楽の幻霊》、《大歓楽の幻霊》!
こちらのターン:フェッチから《Tundra》、《剣を鋤に》。誘発で4点受けた上で相手の《Force of Will》。
これで...ゲームエンドです。
ヴィンテージ!
まさかの1ターン目に《大歓楽の幻霊》2枚。
手札に2枚のモックスと《Ancestral Recall》という、殆ど最高のハンドをキープしながらも一瞬でやられました。スタンダードに存在するようなカードだけでも、ロータスが絡んだ瞬間にとんでも無い事になるというヴィンテージの凄さを体験しました。
ここまで「ヴィンテージの凄さ」をお知らせしてきましたが、実はこのトーナメントで私が一番驚いたことは別にありました。
どんなデッキも実質1ターンキルが出来る!」という事ではありません。
実はこのヴィンテージという環境、「案外ゆっくり」なのです。
1キル2キル3キルを紹介しといて、何を言っているんだ?と思われるかもしれませんが、上記のような展開が発生する確率はあまり高くありません。どれもロータスが絡んだ上で、さらに3枚程度の手札が必要になります。もちろん、1ターン目がいきなりクライマックス!という事はあります。そんな時でも、《Force of Will》1枚で止まってしまい、初動に全てを費やした結果ドローゴーで数ターン一切動けないなんて事もあります。
あるいは1ターン目にモックスを3枚展開したものの、手札に勝ちに行けるカードが無くてそのままゲーム終了まで動かないなんて事もあります。相手の勝ち手段を止めるカードばかりでそもそも攻められない初手の場合もあります。事実、対戦相手のライブラリーアウトで勝ってしまった試合もありました。ちょいちょい凄い事もおきるけど、やっぱりそこはMTGです。
初動のアクションを重視するデッキ構築をすれば、当然ですが上手くいかなかった時、中盤・後半と脆くなってしまうのです。
そして、そういったデッキが多いなと感じました。
そんなこんなで予選ラウンドが終了しました。
非常に濃密な7回戦で、でも本当に楽しくて、あまり疲れを感じませんでしたね。私は午前中~おやつ時くらいまでは元気一杯でして、ゲーム開始前に対戦相手の方に話しかける事が多いのですが、後半になってくると疲れてしまって淡々とゲームをする事が多いです。
しかし、このトーナメントは楽しすぎて、ずっとハイテンションでした。
ゲーム開始前には「ヴィンテージって凄いですね!」とはしゃいで苦笑され、試合終了後も相手のデッキについて尋ねたり、周りの試合を見て回ったり。当日の朝、知人と話していると「決勝ではお互いがトスをし合うのではないか」なんて冗談を聞きました。
ヴィンテージプレイヤーは大会に飢えていて、神になったら次に開催されるであろう挑戦者決定戦に出られなくなってしまうからだそうです。流石にそれは言いすぎだと思いますが、本当にこんなに面白い大会は中々無いなぁと実感しました。
ヴィンテージ、面白いです。
3.ヴィンテージ神決定戦シングル
SE1:「Show And Tell」 ×○○
SE2:「オース」 ○×○
SE3:「メンター」 ○××
3没・・・!!
八十岡さんがかつてのプロツアー『タルキール龍紀伝』でこんな事をおっしゃっていました。
「準優勝はそのトーナメントで最後に負けた人だからね。むしろ一番の負けだよ」
まさに、この言葉を痛感しました。
元々、ヴィンテージ初体験の私です。
ここで勝ってしまっては、そのフォーマット最強のプレイヤーを意味する神という称号とは・・・?となるところでしたが、それはそれとして悔しいものは悔しいです。無念のあまり、神決定戦の翌日はずっと「あそこをどうするべきだったかなー」なんて考えていました。
そうやって一通り検討すると、神になられた森田さんと私との明確な差を理解できて納得する事ができました。
やっぱり経験、そして練習が大事です。マジックはよくできています。
さて、試合の様子についてお話したいのですが、私が曖昧な記憶で語るよりもわかりやすくて面白い物があります。
是非、カバレージから様子をご覧ください。
ですがそれだけで終わりは寂しいので、試合中にあった大きな分岐点についてお話します。
まず、SE1回戦のvs《実物提示教育》デッキの3本目です。
カバレージでは相手の《実物提示教育》を《狼狽の嵐》で打ち消し、その後ナーセットから凄いことをして勝ったと書かれていますね。
実はここ、本来なら私は負けていました。
第1ターン、《ギタクシア派の調査》で相手の手札を確認しました。
その時の手札が...
フェッチフェッチ《古えの墳墓》 《ザンティッドの大群》《実物提示教育》《Force of Will》《引き裂かれし永劫、エムラクール》
完全にテンパイハンドです。
返しのターンで《サンティッドの大群》を《Force of Will》で打ち消しました。
続けてダクを出して《宝船の巡航》とトップのカード1枚をディスカードしました。
これにより手札が1枚だけになりましたが、巡航を捨てたのを警戒して相手もこのターンに《実物提示教育》は唱えませんでした。
その代わり《吸血の教示者》をキャストされ、何か1枚をサーチされました。
ここでカウンターか《すべてを護るもの、母聖樹》を加えられてしまったかなぁと負けを覚悟しました。
次のターン、案の定相手は仕掛けてきました。アンタップの土地1枚を残しての《実物提示教育》です。
ここで私はすかさず《狼狽の嵐》をキャストしました。
何も無ければ追加の2マナは支払えず打ち消しせるのですが、相手の手札には少なくとも《Force of Will》があります。
つまり、コピーを《Force of Will》で打ち消す。本体を解決し、1マナ支払う。で手札が0枚の私は何も出来ずに《実物提示教育》は解決し、エムラクールが着地して負けのはずでした。
しかし、相手の行動はアンタップの土地からマナを生み、《狼狽の嵐》。
ストームはこの時点で2の為、私に要求された追加の支払いは3マナとなります。私は土地が3枚アンタップ状態だったため、その全てに対してマナを支払い解決しました。これでこちらの《狼狽の嵐》が両方とも通り、《実物提示教育》を打ち消し。次のターンにナーセットを引き込んだ私は、ダク・フェイデンとナーセット、2人のプレインズウォーカーの力を借りて勝利できました。
相手の方は、マジックのトーナメントにおける決勝ラウンドを殆ど経験されたことの無い方だったそうです。
それだけに緊張も大きく、ここ一番でミスをしてしまったのだと思います。ヴィンテージは大きな大会が非常に少なく、大会慣れされていない方の割合が高いフォーマットでした。そういう点を考えると、このトーナメントにおいて大会慣れしているというのは大きなアドバンテージだったなと思います。
そして決勝です。
このマッチは3回ともを通して、土地が非常に多いハンドをキープしました。土地が4枚、4枚、3枚とありモックス等も無く、初手としては明確に弱いハンドでした。それでも気にせずにキープをしたのですが、3本目の先手に関してはもう少し強い初手を目指しても良かったかなと思いました。このマリガンの判断が非常に難しく、神になられた森田さんは明確な基準をもたれていてマリガンされたようでした。
そこが私との差だったのだと思います。
当日お話した八十岡さんがおっしゃっていたのですが、「ヴィンテージはサイドボードとマリガンが特に難しいゲーム」だそうです。決勝という場に至り、その2点をきちんとできるか否かの差が明確に出たなと感じました。
4.ヴィンテージ神決定戦を振り返って
まず今回のデッキの反省を。
サイドボードの《摩耗+損耗》3枚と《ダク・フェイデン》は明らかに過剰でした。そして、これらを採用する意味もあまりありませんでした。
「茶単(MUD)」の対策として入れるのであれば、1マナで無ければ間に合いません。その為、《磨耗+損耗》は丸さこそあるものの3枚は過剰。
《ダク・フェイデン》の4枚目はやりすぎでした。それからメインボードに入っていない《Library of Alexandria》。
構築の項で散々不用論を書きましたが...入れるべきでした。反省しています。ヴィンテージについて全く知らない方にはわかりづらいかもしれませんが、このカード...凄く強いです!マナベースの問題はどうであれ、入れない理由はありませんでした。
同じく構築でピックアップした《ギタクシア派の調査》も減らして良いですね。これは純粋に、今回経験を積めた事が理由です。
という事で、以下のようなリストに直しました。もしパワー9を持っていてヴィンテージのデッキに悩んでいる方がいましたら、参考にしてみてください。
サンプルリスト 「メンター」 松本友樹 |
16lands 1《Library of Alexandria》 3《霧深い雨林》 3《汚染された三角州》 2《溢れかえる岸辺》 2《沸騰する小湖》 3《Tundra》 2《Volcanic Island》 8creatures 4《瞬唱の魔道士》 4《僧院の導師》 36spells 4《精神的つまづき》 2《狼狽の嵐》 1《Ancestral Recall》 1《渦まく知識》 4《剣を鋤に》 2《Mana Drain》 4《Force of Will》 1《時を越えた探索》 2《ギタクシア派の調査》 1《思案》 1《定業》 1《Time Walk》 1《宝船の巡航》 1《Black Lotus》 1《Mox Jet》 1《Mox Ruby》 1《Mox Emerald》 1《Mox Sapphire》 1《Mox Pearl》 3《ダク・フェイデン》 2《卓絶のナーセット》 sideboard 3《貪欲な罠》 3《封じ込める僧侶》 1《翻弄する魔道士》 1《紅蓮破》 1《狼狽の嵐》 1《Mana Drain》 1《至高の評決》 1《光輝の炎》 1《鋳塊かじり》 1《摩耗+損耗》 1《流刑への道》 |
最後に、全体を通しての感想です。
今回のヴィンテージ神決定戦でとても凄いと思ったのは、対戦した皆さんが本当に楽しそうだったということです。試合が終わった後も皆さんとても楽しそうで、悔しい思いより楽しさが勝っているような印象を覚えました。
普段の私なんかは負けてしまうと悔しさのあまり、言葉が全然出てこなくなってしまいます。大抵は負けました、と投了してから席を離れるまで、ずっと「敗因はなんだろう、ミスは無かったかな・・・」なんて事を一人で考えて、殆ど話もしないで席を離れてしまいます。負けた時に笑顔でありがとうございましたって言えないのですよね。
でも私が対戦した皆さんは笑顔で「ありがとうございました、次も頑張って下さい!」と言って下さいました。とても嬉しいと感じましたし、凄いなとも思いました。主に金銭的な理由から、他人には勧め辛いエターナル環境ですが、上記のような理由もあってヴィンテージは本当に楽しかったです。皆さんにも、是非体験して頂ければと思います。
ちなみにですが、「ヴィンテージをやってみたい!」という方はパワー9を使ったデッキをまず使ってみることをお勧めします。勿論こんな高いカードを買えと勧める事は出来ませんが、ヴィンテージはやはりパワー9が絡んだ時のめちゃくちゃ加減が最大の魅力だと思います。
パワー9無しで神決定戦のトップ8に入った方もいます。しかし、初めて触れるのはやはりパワー9ありのデッキが一番だと思うのです。競技プレイヤーとしてこんな事を言うのはどうかとも思いますが、何も大会に出るだけがマジックではありません。
友人同士で、実際に持っている人からデッキを借りたり、代用カードを使ってパワー9を満載にしたデッキ同士でフリープレイを遊んでみるのも楽しいと思います。それで実際に大会に出て遊んでみたくなったら、頑張って高額カード達を集め始めればよいと思います。また、MOでならリアルよりも遥かに安く組めるようですね。
大会に出てスリルある戦いを楽しむのも本当に楽しいのですが、ヴィンテージの大きい大会は今のところ神決定戦だけではないでしょうか。その際はパワー9無しのデッキを研究して挑んでみて、それ以外の所では代用カードで遊ぶ、そしていつの日かカードを揃えて...というのが私個人としてのお勧めでお手軽なヴィンテージの楽しみ方です。
ただ遊ぶだけなら、ヴィンテージはMTGの環境の中でも屈指の面白さだと思います。
是非是非、ヴィンテージの世界に触れて見て下さい。
それではまた、記事や会場でお会いしましょう!