【BMO Vol.6】BIG MAGIC Open Standard Vol.6 決勝 田村 亮(三重)対 林 雄平(愛知)

タグ:, , , ,

Text by 森安 元希 BIGMAGIC Open Vol.6 BIGMAGICが主催するBMOもいよいよ6回に至り、それも佳境を迎えた。 大阪開催の今回も参加者数は300人を超え、国内シリーズトーナメントとしては最大級のものの1つとなっている。BM InviやBMS 2大会、PPTQなど多彩な性質を担うトーナメントを併催しながら、それでも最大の目玉となるのはこのオープン制のスタンダード大会だ。 これまでは新セットの発売翌々週ごろの開催であることが多かったが、今回はスケジュールが変更され、環境が成熟して新セットのプレビューが始まっている頃となった。 新デッキタイプのお披露目となることも多かった今までのBMOとは明らかに雰囲気の異なっていた。 田村 亮(三重)vs 林 雄平(愛知) DSC_0272 林 雄平は若い世代のプレイヤーだ。同世代として既に第一線で活躍しているJ-SPEEDことHareruya Prosの原根 健太らとも同郷として交流があるようで、この決勝進出を聞きつけて応援に駆けつけていた。 林は【アブザンアグロ】という地力のあるデッキを持ち込んだ。『タルキール覇王譚』での《包囲サイ》登場から2年。"スタンダードの覇者"として恥じない活躍をし続けてきた【アブザンアグロ】も、そろそろ引退を迎えるころだ。 その最後の火花の一つとして、このBMOを選んだプレイヤーは少なくないだろう。 研究されたリスト、研究された展開を武器に、SE Round2では【バントミッドレンジ】という新デッキを打倒してきた林が、今度は【4色ラリー】を切り崩す為に立ち向かう。   DSC_0266 トップ8に3人を送りこんだ"スタンダードの新たな王者"こと【4色ラリー】の田村 亮は、【マルドゥグリーン】2連戦を征しての決勝進出だ。 《先祖の結集》自体は『運命再編』で得ているが、その真価が発揮されたのは『マジック・オリジン』で《ヴリンの神童、ジェイス》を得てからであった。 そして今回の『ゲートウォッチの誓い』で最後のマスターパーツともいえる《反射魔道士》を獲得し、リストを進化させ続けてきた【4色ラリー】の最終形態を用意した。 その変動し続けてきたデッキのプレイングは自動車のマニュアル運転のように癖があり、細かい調整も必要だ。MTG歴は10数年を越えるという田村の老練のハンドルさばきが光る。 Game 1 スイスラウンド1位通過の田村が先手を宣言した。 《ズーラポートの殺し屋》《ナントゥーコの鞘虫》《地下墓地の選別者》を含んだ7枚をキープする。   《始まりの木の管理人》《森の代言者》のみと展開が心もとないハンドを林は1マリガン。《巨森の予見者、ニッサ》《残忍な切断》土地4で今度はキープを宣言し、遅い展開が予想されたが、占術によって《始まりの木の管理人》を乗せて最序盤の動きを確約させた。 後手1ターン目のこの《始まりの木の管理人》からゲームがスタートする。 田村も想定通りに《ズーラポートの殺し屋》を展開。《地下墓地の選別者》と続けて3/3の《始まりの木の管理人》アタックに待ったをかける。 林、3ターン目、アブザン3色を揃えつつ変異をプレイ。4ターン目に《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を唱え、マナ基盤もドローもベストに近い。 田村はハンドから《地下墓地の選別者》2体、《ナントゥーコの鞘虫》と並べていく。 更に末裔トークンを消費しつつ《集合した中隊》で《シディシの信者》と《ズーラポートの殺し屋》2号を追加し戦線を横に一気に伸ばしていく。《シディシの信者》が自身と道づれに2点をドレインしながら3/3の《始まりの木の管理人》をはじき返してテンポに差をつけた。 そのまま《地下墓地の選別者》2体で《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》へアタック。同時に《ナントゥーコの鞘虫》で本体へアタックを試みる。この3体アタックを、"表返せない変異クリーチャー"と"同盟者トークン"でどう受けるかで今後の展開が大きく変わる林。実際にカードを動かしながら各パターンを検証し、同盟者トークンで《ナントゥーコの鞘虫》のみをキャッチした。 同サイズの為、《ナントゥーコの鞘虫》が生き残る為には能力起動が必須だ。コンバットに参加していない《ズーラポートの殺し屋》1体か、能力起動はなく《ナントゥーコの鞘虫》と同盟者トークンを相打ちするか、もし《地下墓地の選別者》を生け贄にした場合は《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を守れる算段だ。結果としては《ズーラポートの殺し屋》1体との相打ちという形となった。   続いて田村のハンドから《ズーラポートの殺し屋》3号機が降ってくる。返す刀で攻勢を形成する為、《棲み家の防御者》の変異を明けて《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を回収しつつ、《風番いのロック》強襲して戦線を盛り返す。 高くそびえる3/4というサイズのブロッカー2体に対して田村、総員アタックを仕掛ける。林もこれに応じて総員ブロックで戦闘ダメージこそ1に抑えるものの、小粒なアタッカーたちが死ぬ為《ズーラポートの殺し屋》2体が直接ライフを吸っていく。続く第2メインで《先祖の結集》が唱えられ、《ナントゥーコの鞘虫》が復帰すると《ズーラポートの殺し屋》が吸えるはずの林のライフはもう空になっていた。 田村 1-0 林 Game 2 田村、《反射魔道士》3枚、《森》、《汚染された三角州》、《集合した中隊》、《先祖の結集》をキープした。序盤を凌ぐ《反射魔道士》と色マナの片方は確保できている為、土地をもう1枚引ければ時間を稼げそうだ。【アブザンアグロ】に対する《反射魔道士》の評価の高さが見て取れる。 林は1マリガンして《神聖なる月光》《先頭に立つもの、アナフェンザ》《包囲サイ》をキープ。この《先頭に立つもの、アナフェンザ》からゲームスタートという緩やかな展開となった。 田村は初ドローで《汚染された三角州》を引き、マナスクリュー(土地不足)への懸念が大きく解決している。2枚の《汚染された三角州》から《島》《大草原の川》と探し、《先頭に立つもの、アナフェンザ》を《反射魔道士》でお帰り願って先手後手を入れ替える。 林も無事4枚目の土地を引いており《包囲サイ》を着地させてプレッシャーをかけ続ける。 田村もまた4枚目の土地を引けている。《集合した中隊》につなげ、《エルフの幻想家》、《ズーラポートの殺し屋》、《地下墓地の選別者》、《ヴリンの神童、ジェイス》というより取り見取りの選択肢を得た。 《地下墓地の選別者》《ヴリンの神童、ジェイス》を選んで横への展開を優先する。 林、《ドロモカの命令》で召喚酔いが解ける前の《ヴリンの神童、ジェイス》を落としながら《包囲サイ》でビートダウンしていく。+1/+1カウンターが乗ったことでクロックも早い。フェッチ起動やドレインと合わせて既に田村のライフは9だ。 田村が《ヴリンの神童、ジェイス》を追加すると、2枚目の《ドロモカの命令》で落ちる。 林、ここでようやく《先頭に立つもの、アナフェンザ》を出しなおすも、田村のトップデッキの《残忍な切断》によって、《先祖の結集》への抑止力とはならない。 しかしここからがお互い鈍かった。 田村は《ナントゥーコの鞘虫》を得られていないことで生け贄手段がなく、《先祖の結集》の性能を不十分なまま使わざるをえず、数体の墓地のクリーチャーを取り戻せないコストとして支払いつつライフを守る。 しかしこの守ったライフが大きい。林必殺の《風番いのロック》強襲にも《反射魔道士》と《束縛なきテレパス、ジェイス》でライフを1にしてギリギリに耐え、《永代巡礼者、アイリ》によって僅かずつだがライフを取り戻していく。 林の戦力は《包囲サイ》のみだ。《束縛なきテレパス、ジェイス》によって2/5というサイズになると、《永代巡礼者、アイリ》のアタックを受けて相打ちを取ることもできない。コンバットに参加できないままじりじりと2点アタックの《永代巡礼者、アイリ》によってライフが減っていく。 林20対田村1まで離れていたライフレースが田村の後半の追い込みによって10対10近くのほぼイーブンにまで戻ってきた。観客もこの逆転劇の行く末を見守るべく、互いのドローに注目が集まる。 田村―…ここまでライフレースを急速に追いかけながら、引くカードは土地しかない。 先にこのじりじりとしたライフレースを脱却したのは林の《包囲サイ》2枚目だ。着地によって再びライフに差がつき、今度は犠牲覚悟で《包囲サイ》が殴り始めてくる。 1体目の《包囲サイ》を縮め続けていた田村の《束縛なきテレパス、ジェイス》がこの状況を打破するべくマイナス能力で《集合した中隊》にフラッシュバックをつけ、唱える―…ここでようやく初手から握り続けていた林の《神聖なる月光》が合わさった。 《束縛なきテレパス、ジェイス》のプラスから解放された2体の《包囲サイ》が猛威を振るい、田村のライフは再び1という危険値を示した。 ここから再びの逆転劇となるか。コンバットで《包囲サイ》1体は打ち取り、膠着状態を図れるか。そうした思惑の田村に対し、林は《棲み家の防御者》で《包囲サイ》を回収すると、コンバットを経ず田村のライフは尽きてしまった。 田村 1-1 林 Game 3 《巨森の予見者、ニッサ》《先頭に立つもの、アナフェンザ》、土地5をキープした林。 2ターン目《ヴリンの神童、ジェイス》スタートを切った田村。 能動的に強いところでは《エルフの幻想家》、《地下墓地の選別者》をハンドに抱えるが持っている土地では緑マナにアクセスができない。色拘束の少ない《ナントゥーコの鞘虫》から展開していく。 林はキープハンドの予定通り《先頭に立つもの、アナフェンザ》からスタートする。 4ターン目に《森》を引いた田村。これで展開の幅が広がった。《地下墓地の選別者》から入る。そのまま《残忍な切断》で《先頭に立つもの、アナフェンザ》を退ける。《地下墓地の選別者》2体を並べて横に広げていく。このクリーチャーの数を一気に展開するのは、単体除去の多い【アブザンアグロ】に有効な戦略だ。 《包囲サイ》、《巨森の予見者、ニッサ》と続ける林。 《束縛なきテレパス、ジェイス》で《残忍な切断》を使いまわして《包囲サイ》を焼き払い、《ナントゥーコの鞘虫》と《地下墓地の選別者》2体でダメージをかせいでいく。 林、《巨森の予見者、ニッサ》を変身させ《精霊信者の賢人、ニッサ》のプラス能力で引いた4/5の《森の代言者》を即座に展開して守勢を作る。2/3である《地下墓地の選別者》のアタックは通らなくなったが《ナントゥーコの鞘虫》は通さざるをえない。 田村も《集合した中隊》で《永代巡礼者、アイリ》、《ナントゥーコの鞘虫》2号を追加したことを皮ぎりに、ハンドから《ズーラポートの殺し屋》《ヴリンの神童、ジェイス》と少しずつクリーチャーを足していき盤石を築いていく田村。見えている打点は既に致死量のものだが、林のマナが立っている限り《アブザンの魔除け》を含めた除去カードを意識して《ナントゥーコの鞘虫》を能動的に育てることはしない。 守勢を取れている間に《精霊信者の賢人、ニッサ》で毎ターン2枚ずつハンドを増やす林だが、盤面を大きくまくれるほどのカードは見えてこない。《巨森の予見者、ニッサ》の公開こそ有効牌だが、通常ドローは土地が続き、溢れている。初手からある土地を未だ置ききれていない状態だ。 ようやく《始まりの木の管理人》を引いて、これを成長させていくプランが見つかるが、田村も幾たびかの占術と《エルフの幻想家》と《ヴリンの神童、ジェイス》のドローによって《ズーラポートの殺し屋》2号を見つける。 2枚が同時に戦場に揃った地点でコンバットを経由せずにライフが喪失してしまう林。《ズーラポートの殺し屋》1号に《残忍な切断》を当て1ターンの猶予を貰うが、それでも《森の代言者》と《始まりの木の管理人》という全ての戦力をチャンプブロックに回さざるを得なかった。次のドローに思いを託す。   林のドローは―…《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》。孤立した2/2の同盟者トークン1体では、10体にも及ばんとする敵勢を受け止めるにはあまりにも貧弱であった。 田村 2-1 林 田村Win! 急がず慌てず、盤面とコンバットのコントロールを徹底した田村が差し切った。Game 2でも寄り切られこそしたもののライフ1でも決して諦めず、集中し続けた成果は確かにあった。 確実に詰めきれるようになるまで決して無暗な冒険をしないスタイルで、林の勢いをしのぎ切った。実は田村は、グランプリ・神戸2012のシールド戦にて《しがみつく霧》という強力な"濃霧"をエンドカードとして戦法に組み込み、大森 健一朗に勝利して初日全勝を収めている。"コンバットを経たライフのコントロール"を用いた戦法という観点では、少なくとも数年前から熟練の域に達していたのだ。 2日間、全18ラウンド。グランプリ本戦と全く同じラウンド数を通して、【4色ラリー】という強力ながらも難解なデッキを的確に乗りこなし続けた田村の手元にトロフィーが届く。 DSC_0399 BIGMAGIC Open Vol.6優勝の栄冠が田村に与えられた。おめでとう!