0.マジックの背景世界・多元宇宙
マジック:ザ・ギャザリングは世界初のトレーディング・カード・ゲームであり、このゲームの誕生はそれまでになかった全く新しい文化を作り上げた。
発売より23年、今でも毎年複数の新規セットが登場し、世界中の数えられないほどのプレイヤーに愛され続けている。この様に長く愛される秘訣は…マジック自体のゲーム性は勿論のこと、個人的には背景世界の存在も大きく貢献していると考えている。
マジックは、それぞれのセット毎に舞台となる「次元」が設定されている。霊気によって満たされた、無限の広がりを持った漆黒の空間…久遠の闇。
この闇の中に、天体のように無数の次元と呼ばれる世界が点在している。この多種多様な次元により形成されるのが、マジックの背景世界の舞台、「多元宇宙」だ。
マジックの主人公達、そしてこのゲームを遊ぶプレイヤー達はプレインズウォーカーと呼ばれる、この多元宇宙を移動して次元間を行き来できる存在だ。
多種多様な次元での戦いに挑むプレインズウォーカーの物語を、我々は見届けることになる。
今回のセットでは、この多元宇宙に浮かぶ次元の1つ、イニストラードをとりまく物語が展開されることとなる。
1.イニストラード
マジックの次元は、それぞれにテーマ・モチーフがある。テーロスはギリシア神話、ミラディンは金属世界…といった具合に。
今回の物語の舞台・イニストラードのモチーフは…
「ゴシックホラー」だ。
中世ヨーロッパ風のこの次元に住まうのは…人間と、彼らを餌食にせんとする、吸血鬼や狼男。魔力や科学によって人為的に作り出されたゾンビ達。他者を守護するため、あるいは呪い殺すためにさまよう亡霊。炎で遊ぶ小悪魔に、宙を舞う大悪魔…
これら恐怖の存在と同居する人々を支えるのは…守護天使、アヴァシンを初めとする天使達だ。
人々はアヴァシン教会の教徒として、人類の味方である彼女を崇拝している。
このアヴァシンは、次元全体に影響を及ぼす防護魔法を扱えるなど、奇跡を呼び起こす完璧な守護者であったが、彼女が闇の勢力を抑えたことで、相対的に悪魔達はその中で力を増していった。
この悪魔達を狩り続けたアヴァシンであったが、いくら狩ったところで次の、そのまた次の悪魔が誕生することに気付く。不滅の悪魔達に対する最大の対処は、捕らえて封じることであるという結論に達し、悪魔の力を封じる首輪を作成、これで捕らえた悪魔達は獄庫と呼ばれる銀の塊に封じていった。この首輪は、アヴァシン教会のシンボルともなっている。
この首輪が通用しなかった大悪魔グリセルブランドとアヴァシンは一騎打ちを行い、死闘の末に両者共倒れ、揃って獄庫に封印されてしまった。
彼女が封印されたことで、その防護魔法は力を弱め、再び闇の勢力が台頭。人類は絶滅の危機に瀕した。
この獄庫の封印は、黒のプレインズウォーカー・リリアナ・ヴェスによって破られる。契約主であるグリセルブランドを抹殺しに来た彼女は、結果的にアヴァシンをイニストラードへ帰還させ、再び人類へ希望を与えることになった。天使達が姿を現し、神官や魔道士達もその力を取り戻した。イニストラードに蔓延していた呪いの性質は変容し、一部の狼男達は高貴なるウルフィーへと姿を変えた。
ここまでが、『イニストラード』『闇の隆盛』『アヴァシンの帰還』で描かれた、イニストラードの物語だ。
2.その後のイニストラード
アヴァシンが帰還したイニストラードでは、人類は平和と安寧を取り戻した。
それから1年。人々の祈りの声を聴き、彼らを救う希望の天使、アヴァシンにある異変が…
「人の種は腐っている」
アヴァシンに去来した、この思考…。
数え切れぬほどの人間を救ってきた彼女が達した結論。
闇の者を狩れば、本当に平和は訪れるのか?彼女がどれだけ努力しようとも、人はそれによってつくられた世界の中で、森を切り倒し川を汚し、そして人同士で醜く争い殺し合う。
怪物達を狩りつくし、人類の繁栄を助けることが、本当に価値のある行いなのか?
否、そうではない。
今やアヴァシンら天使の軍団は、地上から人類を根絶やしにせんとその矛先をかつて守護した者達に向けている。
このイニストラードに、来訪者あり。ゼンディカーでエルドラージの巨人2体を破壊したゲートウォッチの一人、ジェイス・ベレレンだ。
1000年前、この次元に秩序をもたらすためにアヴァシンを創り出したプレインズウォーカー、ソリン・マルコフへの手がかりを追って…。
3.人物紹介
ジェイス・ベレレン:人間のプレインズウォーカー。次元ゼンディカーにて、多元宇宙で最も危険な存在・エルドラージの撃退に成功するも、最も巨大なエルドラージ・エムラクールは未だに多元宇宙のどこかに存在する。遠い昔、精霊龍ウギンと共にエルドラージを封じたプレインズウォーカー、ソリン・マルコフとナヒリから情報を得ようと、ソリンの故郷イニストラードへと旅してきた。闇の勢力、そして天使が人間を狩るこの次元で、彼を待ち受けるものとは…。
ソリン・マルコフ:かつてエルドラージを封印した旧世代プレインズウォーカーの生き残り。イニストラードの出身であり、吸血鬼の血統マルコフ家の生まれ。飢饉への対抗策として人を吸血鬼化させる実験を行っていたエドガー・マルコフの手で吸血鬼となり、その時のショックでプレインズウォーカーの灯が目覚める。イニストラードで吸血鬼が無秩序に人を喰らうと、人間および吸血鬼が共に絶滅してしまいかねないとして、人類を護る天使・アヴァシンおよび彼女に関する宗教を生み出す。今、彼が人類の味方とした天使は彼らに刃を振るう堕ちた存在と化した。自身の「プレインズウォーカーとしての大事なもの」を犠牲にして生み出した天使を、彼はその手で止めねばならない。
また、精霊龍ウギンと共にかつてエルドラージを封じたプレインズウォーカー、石術師ナヒリを探し出すという目的は果たして…。
アヴァシン:1000年前にソリンによって創られた天使。それまでこの次元にいた天使達とは何の繋がりもなかった彼女だが、その絶大なる力で彼女らを束ねる、天使の象徴として人々を護り続けてきた。ある日芽生えた、人類に対する敵意にその心は支配され、かつて護りし者達の血でその槍を染めている。彼女を狂わせたものとは一体…?
タミヨウ:次元神河出身の空民のプレインズウォーカー。彼女はこのイニストラードで、銀の月がこの地の様々な生物にもたらす影響について研究している。今回のイニストラードの異変に関して、彼女が知っていることとは?ソリンを追うジェイスは、彼女の残した手がかりを追うことになる。
ナヒリ:かつてソリンと共にエルドラージを封印したコーのプレインズウォーカー。彼女がイニストラードへ来た目的とは?ソリンとナヒリの間で、何があったのか?その謎が明かされる…。
4.イニストラードの風景
イニストラードの大陸は、以下の4つの州からなる。
ガヴォニー:アヴァシンの大聖堂を有する、アヴァシン教会の中心地。城塞都市スレイベンをはじめ、この世界で最も人間が護られた強固な都市であるが、同時にムーアランドのようなアンデッド・グールが蔓延る危険な地域も有している。
ケッシグ:自然に恵まれた農村地帯であり、要するに田舎。ここに住まう人たちは実直で、自律的。都会者を嫌う傾向にあるが、アヴァシンら天使を真面目に信仰する者が多い。彼らは森林地帯に潜む狼男の危険と、常に隣りあわせだ。
ネファリア:海に面した、沿岸部の港町。ガヴォニーが信仰で栄えた州であるならば、こちらは海と河川を活かした商業・交易で栄えた州だ。今日も合法・違法・人身売買など様々な取引が交わされている。
ステンシア:イニストラードで最も暗い、険しい山脈で覆われた未開地域。多数の吸血鬼が生息しており、ここに住まう人々は可能な限りの防御体制の元、細々と暮らしている。ソリンの一族であるマルコフの荘園もこの地に存在する。
4月8日(金)発売の『イニストラードを覆う影』の背景世界・設定はまだまだ明かされ始めたところだ。
これから物語がどう進められていくのか、今から楽しみだ!
※画像の一部は、
mtgjpから引用させていただきました。