【BMO Vol.8】BMO Standard Vol.8 渡辺雄也杯 準決勝B 奥村 祐司 vs 中道 大輔
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Text by 森安 元希
先に行われた準決勝Aは、奥村と同じく"ピットイン"勢の岡井が斉田と戦い、負けた。
「後は任せた」岡井の言葉を背負い、奥村が中道と相対する。
斉田と同じくPWC勢の中道は、トーナメントシーンに関わる者であれば知らない者はいないだろう。
負け知らずの中道。トップ8進出率は目を見張るものがあり、その安定したプレイングにプロたちからの信頼も厚い。
2015年度のミスターPWCとして、初代ミスターPWC渡辺雄也が待つ優勝の先の直接対決を見据える。
斉田、岡井らと同じく『青白フラッシュ』を選択している中道。
プロツアーやグランプリを経て環境が固まりつつあるなか、頭角を現してきた最強デッキの筆頭候補だ。
調整の結果、共に調整してきた岡井の『青白フラッシュ』には勝てなかったからデッキを変えた。と笑う、奥村。
勿論、その過程を経たのであれば、青白フラッシュにただ負けるようには組んではいないはずだ。
スイスラウンド上位の奥村が先手を握ることを確認しつつ、互いのデッキリスト交換が行われる。
奥村は『青白フラッシュ』を主軸としながらも、大胆に緑を取り入れた『バントミッドレンジ』だ。
《導路の召使い》でマナ加速し、《実地研究者、タミヨウ》や《不屈の追跡者》で中盤をいなし、《新緑の機械巨人》で圧倒する。
もちろん《反射魔道士》や《大天使アヴァシン》といった主軸のクリーチャーは残っており、
その代わりに各枚数は控えめで、実際のドローでゲームプランやプレイングが随時変更されるタイプのデッキだ。
リスト用紙のみならず、中道の提案で実際にデッキを交換して互いにデッキを見比べていた。
「デッキ綺麗ですね。《鎖鳴らし》ないんですね」
「あ、《異端聖戦士、サリア》メインだ」
奥村は中道のリスト用紙とカードを手にもって比較していく。
特にサイドボードを注視しているようで、15枚をひたすら繰り返し見ていた。
「《異端聖戦士、サリア》、めちゃくちゃ強いんですよ」
「これ、良いとこデッキですね」
枚数の散っている奥村のデッキを感覚でも覚える為だろうか。
中道は60枚のメインを実際に広げて、カードを揃えながらゲームを仮想していく。
「じゃあ、楽しみましょう」
「楽しみましょう」
どちらからともなく、晴れた笑顔を浮かべ合って対戦が始まる。
緊張感がない。わけではない。
それでも互いに無駄な力ははいっていないようであった。
互いに全力を尽くすことを誓っていた。
Game 1
お互い、勇敢にマリガンを選択し、6枚からスタートする。
「《導路の召使い》がいる分、土地が少ないハンドはマリガン後のキープはしやすい」と話す奥村。
実際に奥村の初動は《導路の召使い》となった。
返す中道は《密輸人の回転翼機》を置くのみと静か。
先手3T目《不屈の追跡者》+セットランドの調査と《呪文捕らえ》を構える2択で悩んだ奥村は、《呪文捕らえ》を選択した。
《反射魔道士》を含めて幾つか致命的な動きがあることを懸念したのだろう。
そのまま奥村は《不屈の追跡者》をハンドに溜め、《導路の召使い》でアタックを仕掛けていく。
《呪文捕らえ》を放つ中道。待っていたと言わんばかりに、《呪文捕らえ》を被せた奥村。
これで一旦、ダメージレースは奥村が明確に有利となった。
《無私の霊魂》2枚を続けて展開する中道。
《密輸人の回転翼機》も2枚目を着地させ、航空戦力を揃えていく。
その間、隙を見て置いた奥村の《不屈の追跡者》が育っていく。
セットランドによって調査が進み、ハンドも充実してきた。
これで引き込んだ《反射魔道士》2枚で、《無私の霊魂》と《密輸人の回転翼機》を戻し、攻勢に出る。
ブロッカーを減らさないようにバウンスされる《無私の霊魂》で《密輸人の回転翼機》に搭乗したのが裏目となった。
この青白軸のマッチにおいて、最も攻防のキーとなる《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を中道は置けていたのだが、
想定外に減ったブロッカーでは奥村のアタックを受け止めきれず《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を諦める。
《無私の霊魂》と《密輸人の回転翼機》で果敢に攻め立てる中道だったが、地上はいなすので精一杯だ。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を出し直し、トークンを並べてチャンプ的な防御に徹し、空から殴りきるプランだ。
だがしかし、そのプランが崩壊したことを知るのは直後のターンだ。
ここで奥村、《石の宣告》を引いていた。
《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の生成した同盟者トークン3体が一掃されると、
《不屈の追跡者》を筆頭に奥村の地上クリーチャーたちは、その牙を中道へと突き立てる。
奥村 1-0 中道
Game 2
両者7枚スタートから《密輸人の回転翼機》を出し合うスタート。
機体の性質上、先手の中道が暫く序盤の主導権を握る。
《呪文捕らえ》で奥村のクリーチャー展開を阻害し、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で頭数を並べていく。
奥村は二回の《密輸人の回転翼機》アタックでなんとか《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を落とすものの、
中道のハンドから《異端聖戦士、サリア》が現れてブロッカーの用意が致命的に遅れるが予定されてしまった。
自らのハンドとの噛み合いが悪い。
奥村はそう言わんばかりに、若干おどけた表情を浮かべてみせるが、すぐに気を取り直す。
この《異端聖戦士、サリア》こそ《石の宣告》でどけると
《石の宣告》で《不屈の追跡者》を追放され返される。
《反射魔道士》で《反射魔道士》を突き返してギリギリまでライフを守っていく奥村。
同盟者トークンと《反射魔道士》でじりじり詰めていく中道。
中道がゆるやかながら確実に攻勢を続けた結果、奥村のライフが残り2になったことを受けてEOTに《呪文捕らえ》をダメ押し的にプレイ。
奥村は《無私の霊魂》2枚を犠牲に《呪文捕らえ》を撃墜する。
中道は更に追い打ちをかけるべく、《保護者、リンヴァーラ》をプレイ。
《反射魔道士》のにらみ合いでクリーチャーの総数は変わらず、もちろんライフも勝っており、5/5飛行としてのプレイだ。
奥村は「ここ」と踏み、ハンドに秘め続けた《垂直落下》を合わせた。
《保護者、リンヴァーラ》が落ち、これでお互いのハンドが空となる。
これで中道の攻勢をしのぎ切った形となる奥村。
完全にトップ勝負へと持ち込むが―...中道が渾身の一撃とするべく奥村のターン終了時に《大天使アヴァシン》をプレイ。
最高とも言える引きの1枚だ。
そして奥村のわずか2枚のハンド、そこに何もなければ中道の勝ち―...
そして《大天使アヴァシン》のアタックに合わせて奥村がカードを1枚示した。
《大天使アヴァシン》。
中道の最高の引きに、奥村も最高の引きで応じた。
奥村 2-0 中道
奥村Win!
斉田が待つ決勝へと駒を進める。
斉田は中道の、そしてPWCでの募る思いを背負い決勝へと進む。
奥村も岡井の、そして新鋭たちの期待を浴びて決勝へと進む。
思いの強さであれば、引き分けになるかもしれない。
しかしシングルエリミネーション、決勝戦。引き分けはない。
互いが信じたデッキとデッキを操縦する自らの腕が、勝敗を決める。