嵐の大釜/Storm Cauldron
タグ:Card of the Day, MTGシングル, Storm Cauldron, 嵐の大釜, 第6版, 第7版Card of the Day -今日の1枚- 2016/12/7
嵐の大釜/Storm Cauldron
でっかい鍋、鍋と言うより釜で芋煮を炊くイベントなんかを毎年ニュースで見ると、ちょっと憧れる。巨大な器具で大量に調理って、やってみたくならないだろうか。バカでかい釜をこれまたでかいヘラでかき混ぜてみたいものである。これは幼少期に数多の作品で見た、魔女やマッドサイエンティストがゴポゴポ泡立つ釜をかき混ぜるそのシーンへの憧れ的な要素を含んでいる、のだろうか。今日はまさしく魔術師がぐーるぐーるかき混ぜる、皆も見たことがあるタイプの釜のお話。
《嵐の大釜》というカード名がまず良い。形無き天空の事象と、人の手で作られし鉄の塊。この組み合わせがなんともファンタジックで、テンションUP。初出の『アライアンス』版のイラストではこの大釜で何かを煮立てることで天候を操作していると思わしきシーンが描かれている。これぞ"魔法"感があって、僕が最初に目にしたのは同イラストの『第6版』のそれだったが、古典的なファンタジーの世界への扉が開かれたような気がしたものである。続く『第7版』再録時は、釜のサイズも大幅アップ。より禍々しい形状となり、かき混ぜ担当の人もスタイリッシュなポージングで鍋番をしている。この大釜はその内部で直接嵐を精製する仕組みのようで、稲妻を吐き出している。
これらのイラストから、嵐を起こしてダメージを与えるアーティファクトに見えるが...実際にはそういったものとは全く異なる挙動を見せるカードである。まず、各プレイヤーは自分のターンに追加のセットランドを得る。《踏査》のように自分だけ恩恵を受けるというわけではないのでは、そこは要注意だ。毎ターン土地を2枚置けるようになるメリットを対戦相手も享受することを考えると、これだけを狙って使用することは難しいが...ここでもう1つの能力がポイントとなる。土地がマナを引き出す目的でタップされると、それはそのオーナーの手札に戻ってしまう。土地を置ける枚数は増えても、動けば動くほど使えるマナの総量はゴリゴリと減っていってしまうのである。
そんなわけで、このカードを使う際は土地バウンス能力で対戦相手の行動に軽く制限をかけつつ、自分は両方の能力を活かせるような構築を目指したい。例えば、ただの基本土地を出入りさせるのではなく《ガイアの揺籃の地》のような使いまわせるととんでもないことになる類の土地と組み合わせてマナを爆発させるとかね。
このカードを最大限に利用したのがマジック初期のコンボデッキの1つ「ストームドレイン」。《Fastbond》で1ターンに土地を置ける制限をとっぱらって(大釜の最初の能力は無意味になるが問題はない)、《嵐の大釜》を設置したらあとは土地からマナ→手札に戻る→また出してマナ、を繰り返す。ライフが0になったら終わり...に見えるが、96年あたりの『第5版』より前のルールでは、まだまだ好きなだけこれを繰り返すことが出来た。死ぬでしょ、と思うかもしれないが、この頃のルールではライフが0以下になって敗北するのはフェイズの終了時。フェイズの間であれば、どれだけダメージを受けようが問題なかったのである。これにより、ライフがいくら減ろうが関係なしに黒マナを生み出し続け《生命吸収》で相手のライフを吸いつくし、自身のライフは1以上にして次のフェイズへ...という動きをして勝利するのだ。ハッキリ言ってインチキの域だが、当時はルールがこれを許したのだからしょうがない。こうやって振り返ると、マジックというゲームもずっと同じことをやっているように見えて大幅に変化し続けているゲームなんだなと、改めて思い知らされるのであった。
このカードは『アライアンス』産、ということはこのカードにもゴリラ名がつけられていた(『アライアンス』とゴリラの関係については当コラムで何度か語ったが、いずれこれについてまとめた記事を書いてみよう)。このカードは開発段階では《County Gorilla Rezoning Board》という名前だった。群れゴリラの区割り板?boardは食事とか委員会という意味もあるので「区画整備されたゴリラの群れの食事」「ゴリラの群れ区画分け委員会」とかそういう意味なのかもしれない。いずれにせよ、アホな名前である。