強大化/Become Immense
タグ:Become Immense, Card of the Day, MTGシングル, タルキール覇王譚, 岩SHOW, 強大化Card of the Day -今日の1枚- 2016/12/24
強大化/Become Immense
2016年はプロツアー4回、世界選手権にワールド・マジック・カップと、複数のプレミアイベントに関わるお仕事をさせてもらった。「Card of the 2016」の最後は、この中でも特にワールド・マジック・カップにて強烈な印象を刻み付けたカードで締めくくるとしよう。でっかいことはいいことだ、《強大化》を紹介だ。
『タルキール覇王譚』は突き抜けたカードの大豊作セットだった_良くも悪くも。特に「あかん」カード達はやはり"探査"にあり。不特定マナコストの支払いに、代わりに墓地のカードを充てることが出来るという...《墓忍び》のような愛された名カードもあったりする、良い能力なのだが。タルキールにおいては躊躇のネジを外されてデザインされてしまった。《宝船の巡航》《時を越えた探索》の2枚看板は、モダンはおろかレガシーでも禁止カードとなり、ヴィンテージでさえ制限カードとなった。やはりマナコストを踏み倒してアドバンテージを稼ぐというのはまずかった。1,2マナでやっていいことと悪いことがあるのだ。《Ancestral Recall》入りのバーンデッキってそりゃもう世紀末だろ。
青の2枚に比べれば少々落ちるが、他の探査呪文だってなかなかに使えるものだ。その中でも《強大化》は群を抜いて実用的だった。6マナで対象のクリーチャーを+6/+6するインスタント、こう聞くと《樫の力》がどれだけ強いのかよくわかる。ただ...これが同じ効果で3マナだったら?うーん同等の威力か。2マナなら?そりゃ強い。1マナなら?あかんやろ!ということで、盤面に並んでいる土地とクリーチャーからは想像もできない強烈なダメージを叩き込むことを可能にする1枚として重宝された。まずはスタンダードに殴り込み、特に「赤緑上陸」デッキでの強さは特筆すべきものであった。序盤に上陸クリーチャーのために切りまくったフェッチを有効活用して《僧院の速槍》なんかをパンプ、さらに《ティムールの激闘》で二段攻撃トランプル...3マナと手札2枚で12点って、そりゃどんな火力だよと。この動きはもはやコンボであった。
このパッケージをモダンに持ち込んだのが「SCZ」「Suicide Zoo」などと呼ばれる《死の影》を用いたアグロデッキだ。3キルは平然とかましてくる。同じく3キルをかましてきて、かつ安定感が《死の影》よりも優れるのは「感染」デッキだ。《ギタクシア派の調査》《変異原性の成長》と連打して墓地を肥やし《ぎらつかせのエルフ》《荒廃の工作員》に《強大化》を撃ち込んで瞬殺だ。冒頭でも触れたようにワールド・マジック・カップ2016はこのカードをぶっ放す「感染」が使用率1位を誇った。動きを見ていると、ダントツで強いデッキではあったもんな。探査はドローでなくてもヤバすぎる、ということを証明した形になる。最近ではこのカードが禁止になってもおかしくないという声をよく耳にする。実際どうなるかはともかく、《巨大化》系の呪文がここまで危険な1枚になる時代が来るとは...マジックの長い歴史でも稀有な例である。
イラストでバカデカくなっているのはナーガ。タルキールにて初登場の種族で、ザックリ言えば蛇人間。これを森の中から見上げているという構図、この呪文がもたらす途方もなさを表現していていいね。ここまでデカくなって、ターン終了時に元に戻ると...果たして肉体は耐えられるのだろうか。スゥルタイの人々は魚とかバナナにこの呪文をかけて食糧問題を打開したりしているのだろうか。マジックのこういう側面を考察する記事とかも書いてみたいな。
2016年を彩ったカード達を紹介して、今年の更新は終了。また来年、お会いしましょう。