岩SHOW Card of The Day Collection Vol.3

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ダブリンに行きます。探さないでください。アイルランドってどんな国なんやろうか。ご飯が美味しくて空気が綺麗なら何も言うことは無いっす。ギネスビールの発祥の地とのことで、パブに行ったりするかもね。もうおっさんなんで、グビグビではなくチビチビ飲んで楽しむように変わってきたなぁ。つまみはまだまだいくらでも食えるよ!何の話や。そうそう、プロツアーに行くわけですよ。昨夏以来の、我が盟友・黒田正城さんとの海外カチコミだ(普通の仕事です)。ダブリンのような古い町にいけるって、嬉しいなぁと思っているのだけども、思っているより古くない可能性もある。あえて予習はせずに望んで、初めての感覚を皆に伝えていく方向でやろうかなと。伝わるかな?わからないけど、とにかく楽しみ!



...というわけで、しばらく連載コラム「Card of the Day」を更新できないと思うのでここらで逃げの一手「過去を振り返る」。幸い、1000枚ぐらいカードレビューしてきてストックだけはある(実際に何枚レビューしたかは数えていない)。まだ読んだことないよという方が楽しんでくれたら嬉しいなぁ...やはり昔の分を読み返すのは何ともしんどいことなのだが、ここは逃げない。適当にそれっぽいものをチョイスしたから、通学・通勤電車ででも読んでくれ!(ニート?働くか学べ!)







ケルドのチャンピオン

ケルドのチャンピオン

コメント:ケルチャン!ケルチャンや!赤いカードが弱くなりつつあるタイミングで登場した、救世主的存在。かっこいいし、チャンピオン。誰がプロツアー『霊気紛争』チャンピオンになるのかな。熱い試合が観られることを祈って。

 

王者、って良いなぁ...って。戦い抜き、最後まで立ち続けた者。その人物から放たれる光と言うか何というか...勝利は蚊トンボを獅子に変化(かえ)るという言葉もあるが、実際に元々魅力ある人物が勝利を経験することでここまで眩さを増したものになるのかと。プロツアーを生で観てきて思った次第だ。そんな訳で、今週は「Champion Week」。マジックはゲームにおけるチャンプだけでなく、様々なチャンプにまつわるカードも存在している。それらを紹介して行こうじゃないか。

 

先陣を切るチャンプは《ケルドのチャンピオン》。これぞ先陣の誉れ、一番槍といったカードで週の頭に紹介するのに相応しい。4マナ3/2速攻、これだけだと《タールルーム・ミノタウルス》に劣るスペックだが...実は4マナ3/3速攻というのは悪くないスペックだったりするのであまり気にしなくて良い。それよりもこれに追加の能力がついてくると考えると評価は上がるのみだ。

 

戦場に出た時にプレイヤー1人に3点のダメージを与える。評価、上がるね。クリーチャーというものはダメージを与えるのに最も用いられるカードでありながら、効率が決して良くないカードでもある。唱えただけでは駄目で攻撃してそれがブロッカーや除去に阻まれずに本体に届かなければならない、そしてその攻撃を行うには"召喚酔い"が解けてから・即ち次のターンを迎えてからやっと動き出す...という手間のかかったもものだ。ところがこのチャンプはどうだ。戦場に出た時点で3点のダメージを与え、速攻も持っているので攻撃が通れば計6点だ。4マナで6点与えられれば御の字、素晴らしい。よく似たクリーチャーとして《ボール・ライトニング》が真っ先に思い浮かぶ。どちらも与えられるダメージは6点で、ボーライの方はナチュラルなパワーが高いためにタフネスが高いクリーチャーが立ちふさがっても突破することが可能だ。一方で我らがチャンプは異様にタフネスの高いクリーチャーが立ち塞がったり、《罠の橋》なんかで攻撃を封じられている状況でもダメージを与えることが出来る。チャンプはボーライのマイルド版として作られているのは一目瞭然が、両者それぞれに長所があるってのはいいね。

 

さらにチャンプは、歩く火力元祖のボーライにも出来ないことを成し遂げたりする。戦場に残り続けるのだ。3/2でアタックして生き残れば、言わずもがな次のターンを迎えることが出来る。もう一度アタックをすればカード1枚で9点と高打点を弾き出す。素晴らしい。あるいは、シビアなダメージレースを行っているなら能力で3点だけ与えてブロッカーとして立たせておくという選択肢もある。実際に行うかどうかは別として、そういう選択肢も取れるカードと言うのはそれだけで価値があるものだ。

 

ベタ褒めしているが、勿論欠点もある。やっぱり赤単のバーンやスライといったデッキで使うには4マナは重く、しかもここまで黙ってきたがエコー持ちなので、維持しようと思ったら合計で8マナを支払うことになる。実際にこのエコーはほぼ払われず、使い捨ての飛び道具として使用されていた。総評、そこまで強いカードではない。ただ世代としては、その雄姿はいつまでも忘れられないものだな。




巣立つミサゴ

巣立つミサゴ

コメント:『霊気紛争』にて《ギラプールのミサゴ》なる鳥が登場、この《巣立つミサゴ》を連想した人はどのくらいいただろうか。今ならオーラが付いたらパワーも1ぐらいは上がりそうなデザイン。ひな祭りにあやかっての「雛ウィーク」にて取り上げたのでした。

 

名前に雛はつかないが、雛鳥を表したカード。それが《巣立つミサゴ》だ。イラストは見るからに雛、頭とお尻が大きくて翼が小さい。こんなんで巣立って本当に大丈夫?と思うが...。

 

カードとしては、1マナ1/1。まあ青がクリーチャー激弱時代のコモンのクリーチャーだから、このスペックでプラス能力があるというのも贅沢な話になってしまう。《砂州のマーフォーク》しかり《脱走魔術師》しかり。...あぁ、テキストをよく読むと微妙なプラス能力が!オーラがつくと飛行を得る。なるほど、小さいには小さいがメリットはメリット。とりあえずよっぽどなデッキじゃない限りはさよなら、《脱走魔術師》...。しかしわざわざ1マナ1/1にオーラを貼って飛行を持たせて嬉しいな、っていう状況、そうそうないように思うな...もっと他の能力を持っている殴り値の高いクリーチャーに、飛行がつくオーラ貼っつける方が現実的...いやだからクリーチャーが弱い時代の話だったね。ゴメン。

 

何故、こういったカードがデザインされたのかと言うと、それは『ウルザズ・サーガ』『ウルザズ・レガシー』そしてミサゴが収録されている『ウルザズ・ディスティニー』がエンチャント推しブロックだったためだ。...いや、嘘じゃないよ。エンチャントなんかほとんど使わずアーティファクトばかり使ってたって?皆そうやで。まあ、一部のアーティファクトが突出していたせいもあってそれらの印象を受けるが、今あらためてカードプールを眺めるとエンチャント関連のカードの方が量もバリエーションも多いのがわかる。セットもブロックもエンチャントを推していた一環として、このカードも小さな小さな「オーラ万歳」の一文が印刷されているのだ。まあ《怨恨》のようなエターナル・エンチャントならミサゴが除去されても損はしないので、そこまで駄目なカードでもない。《空飛ぶ男》に笑われても、泣かない度量が、粋なゲーム展開には肝要だ。

 

ところでミサゴって?はいはい動物大好きおじさんの時間ですよ。ミサゴとはユーラシアから北米、オーストラリア広くに渡って生息するタカ目の猛禽。北米の個体はアフリカや南米に渡るため、ほぼ世界中で見ることが出来る鳥なのだ。勿論、日本にも生息している。青いカードであり、イラストは海辺にあることからもわかる通り、主に海岸に生息している。魚類を主に食するその食性から魚鷹とも呼ばれている。名ハンターであるミサゴが仕留めた魚を確保し、放置されたそれが発酵したものを人がとって食べたところ旨味が増している、というのが寿司の起源であるとされ、これを「ミサゴ鮨」と呼ぶ。屋号が「みさご寿司」である寿司屋も少なくはないが、ミサゴに獲物を温存する習性などはないとも言われ、眉唾ものの伝承だったりする。




静刃の鬼

静刃の鬼

コメント:サァイレントブレィドオニィィィッッ!ケンザンッ!

 

「サイレント・ウィーク」もこれにて幕引き。トリを飾るは、Silentをその名に冠するカードの中で個人的に最高にカッコイイと思っている《静刃の鬼》を。英名、《Silent-Blade Oni》。たまらんでしょうこれは...鬼で忍者ってね、日本人では思いもつかないジャパニーズ・ワールドを生み出してくれたセンスに感謝したい。その忍者装束もクール極まりないもので、忍者って良いなぁ...って。ちょっと"モータルコンバット"っぽいのがまた良い。

 

カードとしては、クリーチャータイプがデーモン・忍者とこの時点で「優勝」なのだが、まあ冷静に見ていこう。忍者ということは、"忍術"を持っている。この鬼の場合、素出しすれば青青黒黒を要求する合計7マナとヘビーだが、忍術で戦場に出す場合は青黒1つずつの6マナと、ほんの少しではあるが出しやすさが変化する。まあ忍術の真の目的というのはそこではなく、肝心なのは奇襲性。なんでもないクリーチャーの攻撃を許しブロックをしなかった場合、これがドロンと化けていきなり6/5に。予想外のダメージが叩き込まれる、これはこれで価値があるか、これまた真価はそこじゃない。マジックの忍者たちは、戦闘ダメージを与えることで誘発する能力、かつて"サボタージュ能力"と呼ばれたものを持っている。最も使われた《深き刻の忍者》以外にも、個性的な能力を持った面々がいるのだ。最新の忍者であるサイレントブレードさんが持つその能力は、ダメージを与えたプレイヤーの手札から、好きな呪文を唱えても良いというもの。しかもマナの支払いは不要だ。これ、相手の手札が1枚減りながらこちらは1枚分得しているわけで、実に青黒らしい能力である。この能力で奪った呪文が強力であればあるほど美味しい思いが出来る。《時を越えた探索》とか見えるとウハウハだし、何かの間違いで《エメリアの盾、イオナ》や《全知》、《引き裂かれし永劫、エムラクール》なんかが飛び出した暁にはゲーム終了。

 

故に、このオニが狙う獲物は、重くて強力なカードを抱えるタイプの相手に限られてくる。それも、クリーチャーに対応するのが苦手であればあるほど良い。「Omnitell」なんかを相手取って狙い撃ちしてみたいものだ。このカードのポテンシャルを思いっきり堪能したい、骨までしゃぶりつくしたいという方には《精神破壊者、ネクサル》をジェネラルに据えた統率者戦での使用をオススメする。相手の手札に強力なカードがなければ生きてこない能力であるが故に、ネクサルや《吠えたける鉱山》でゴリゴリにドローさせてしまえば良い。手札をしこたま抱えた相手に飛び込めば、そこにはオイシイ何かがあるはずだ。相手にアドバンテージを与えてしまうネクサルを、忍術で一端引込めることも出来て相性は良い。というより、その2体が並んでいる図を見たいという、それだけの理由に他ならない。

 

イラストの鳥伏間...と呼んでいいのかわからないが、屋根の装飾品から立ち上る青い霊気を、個人的にリスポーン地点と呼んでいる。マジでどうでもいい。超カッコイイ1枚の紹介でした。




脊髄移植

脊髄移植

コメント:2017年は人間の頭部を別の人体に繋ぐ移植手術が計画されているそうな。マジでそんなことできるのか...まだこの《脊髄移植》の方ができそうじゃない?

 

意味は分かるが、聞き慣れなさ過ぎてちょっと待ってくれ、となるカード名がマジックには多数存在する。《脊髄移植》、漢字の意味は分かる。ただ、そんな移植手術って聞いたことないぞ...骨髄移植は耳にするが。それは白血病なんかの治療で、骨髄液を患者に注射する手術である。それだけの手術ではあるが、同じ父母を持つ兄弟姉妹間でも拒絶反応が出ずに無事に移植が可能な確率は25%と低く、大変に難しい手術であることがわかる。これが液どころか、脊髄そのものの移植となれば...まず元の脊髄ぶっこ抜いた時点で、普通は死ぬ。そこは医療の進歩と、魔法の世界を信じよう。その上で、他人の脊髄...つまりは背骨を移植されるわけだ。やっぱり拒絶反応で一発アウトだろ。そこはご安心を、ここで言う脊髄とは、他人の_人類のものでは御座いません。移植されるのはファイレクシアの科学を用いて作られた、どんな肉体も従わせることの出来る器具だ。ファイレクシア人でないものを奴隷として隷従させる場合、脊髄をコントロールしてしまうのが最も手っ取り早いようだ。機械の脳を作り移植するのは難しいしコストもかかるのだろう。イラストを見るに、背中を開かれた人間?に脊髄の方が蟲のように身をくねらせて自ら侵入しようとしている。生産も手術も簡単、植え付ければこの脊髄がもたらす苦痛により永遠に従わせることが出来る。実際にこれを移植されているクリーチャーと言えば《司令官グレヴェン・イル=ヴェク》。彼はこれにより強靭な肉体を手に入れたようだが、同時にヴォルラスに刃向えない立場となってしまった。

 

カードの能力もそれがもたらす恩恵と苦痛を再現している。2マナのオーラで+3/+3修正と破格のサイズアップ。この費用対効果を上回るカードと言うのは今日でもなかなか存在せず、同色の黒で後年登場した《悪意ある力》でも+3/+1と劣る。しかしながら《悪意ある力》はデメリットなし、一方こちらはデメリットあり。まあ、当然な話である。それが...呪文や能力の対象となった場合このクリーチャーを破壊する、というもの。これは...かなり厳しい。一度脊髄を植え付けられたが最後、今後何の呪文も、装備品も、そのクリーチャーには恩恵をもたらさない。もたらすのは死のみ、だ。

 

対戦相手のデッキにクリーチャーを対象にとってくるカードがないのであれば、3段階もサイズが上がるのはゲームを決する力がある。ただ、ほとんどのデッキが当たり前の様に触ってくるのが現代のマジック。このカードはいっそ、対戦相手のクリーチャーに貼り付けるのに使用した方が有用かもしれない。各種タッパーのようにリソースを失わずにクリーチャーに触れる能力でサクっと除去してやろう。人の家臣に強制移植手術を施し傷口に触るたぁ何たる鬼畜。勿論、破壊不能を持つクリーチャーにつければ恩恵のみをただただ得る事が可能だ。




Drop of Honey

Drop of Honey

コメント:この辺から、各種出張と連載の板挟みになりだしたような記憶が。最終的に「色の役割とは何なのかウィーク」にしようと書き出してみたものの、そのネタをばらす前にこの週の真ん中の原稿が途中で止まっている、ということに今気づいた(笑)蜂蜜は子どもの時から大好物である。

 

マジックには「この色がこんなことを?」と違和感を覚えるカードが、特にその最初期のセットにはいくつか含まれていた(『次元の混乱』には意図的に)。これは、まだどの色が何の役割を与えられるべきかが定まりきっていなかったが故にデザインにもある程度の「自由」が許されていた、そんな時代が生み出した不思議なカード達だ。赤い打ち消し、青い土地破壊、そして緑のクリーチャー破壊...今日はその緑の1枚についてのお話。

 

《Drop of Honey》は緑のエンチャントでありながら、直接的に「クリーチャー破壊」を行うという、現在のマジック観から見ると不可解な1枚である。1マナという超軽量なこのエンチャントは、あなたのアップキープの開始時に戦場で最もパワーの低いクリーチャーを破壊する。2/2と1/1がいるならば、1/1がその被害に遭う。その後、その2/2よりもパワーが低いクリーチャーが出てこなければ、次の犠牲となるのはソイツに決定。こうやって、延々と破壊を繰り返し、戦場からクリーチャーが完全に去ってしまうとこのエンチャントも破棄され、蜂蜜の滴が落ちることは二度となくなる。除去呪文と考えると、少々緩慢である。1匹くらいが犠牲になってもどうとでも良いという考えのウィニー系を相手取り、それを食い止めるほどの強さを発揮するわけではない。かといって、クリーチャーがいなければ維持できない特性上1ターン目に設置してロック完成とかいうわけにもいかないというのが...何と言うか帯に短し襷に長し。そもそも、自身がクリーチャーを運用することの多い緑のデッキではデメリットになりかねない。というわけで使いにくい1枚、なんだけども高額なカードの1つである。最初のエキスパンション『アラビアン・ナイト』のカードだから?それもある、アンティーク的な価値もあるが、それだけが理由ではない。

 

このカードは驚くべきことに、「対象」を取らない。クリーチャーはあくまで「選ぶ」という形で破壊の的となるので、被覆や呪禁を持った連中を難なく破壊することが出来るのだ。こんな稀有な能力持ちエンチャントだが、実は1994年から2006年までの実に12年間は、テキストが「対象のクリーチャー」に変更されていたため、マジックの歴史の中でその本来の挙動を行える状態であった期間がズバ抜けて短いカードでもある。永い幽閉を経て、2006年からはエターナル環境で《敏捷なマングース》などの対策カードとして地味に頑張っていたりしたものだ。

 

このカードは、タイの民話をベースとして作られたものだ。「え、アラビアン...?」というツッコミは、飲み込んでいただきたい。「A little drop of honey」というお話。ある日、王様は食事に出た蜂蜜を一滴、床にこぼしてしまった。家来はお拭きしましょうかと尋ねるも「あー、まあ、いいよ大丈夫。誰かがやってくれるから。それよりさっきの話だけど...」とおしゃべりに夢中でスルー。この蜂蜜を舐めに、虫が飛来してきた。この虫を、今度はトカゲが食べにやって来た。虫を喰らったトカゲに好奇心をそそられたのは猫である。これを捕らえようと飛び掛かった猫だが、その猫はそれにより犬に噛みつかれることとなった。さあ、ここで出てくるのは猫と犬、それぞれの飼い主。お前の犬が悪い、いやお前の猫だとあーだこーだの言い争い。これがなんと国中に拡散し、どちらの飼い主側に着くかで国民は真っ二つ。犬猫両勢力の小競り合いは戦争にまで発展。最初は何の話だと傍観を決め込んでいた王様も、元をたどれば自分の蜂蜜が招いた混乱であり「私が何とかしなければいけなかった」と気付いた時にはもう、国が亡ぶ直前でしたとさ。そんなお話。なるほど、うまくカード化出来てるよなぁ。