BIGs 中道大輔 ~日本選手権2021FINAL 優勝デッキガイド~
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お久しぶりです。BIGsの中道です。
この度、日本選手権2021FINALで優勝という最高の結果を残すことが出来ました。
今回出場した日本選手権2021FINALについて知らない方に説明しますと、
日本選手権2021シーズン1~3を勝ち抜いた上位8人、前回の日本選手権2020優勝者、世界最高峰のプレイヤーしか所属していないMPL(マジックプロリーグ)やMRL(ライバルズリーグ)の選手といった選ばれた人しか出場できない大会となっています。
私は日本選手権シーズン3で運良く上位8人に入り権利を獲得することが出来ました。
その時に使用したデッキも白単アグロで、今回使用したデッキも白単アグロ。
《スレイベンの守護者、サリア》がとにかく好きで、対戦相手の行動を縛ってその間に勝つという戦略は、細い道筋を辿って勝つこともあれば圧倒して勝つこともあり好きなゲームプランの一つです。
折角なので当日までの取り組みと、使用したデッキの構成について解説していきますので最後までご覧いただけたら幸いです。
1.禁止制限告知と神河
『神河:輝ける世界』が発売される約1ヶ月前の2022年1月25日、以下の3枚がスタンダードで禁止カードに指定されました。
これにより、トップメタだったイゼット天啓はキーカードを失い概ね解体。
《ゼロ除算》を失った青コントロールは安定性を失い弱体化。
《不詳の安息地》を使用していた白単アグロ、緑単アグロといった単色アグロデッキも強力な攻め手を失い弱体化。
禁止がスタンダード環境に与えた影響は大きく、メタゲームが大きく変化することとなりました。
『イニストラード:真紅の契り』で大きなメタゲームの変化がほぼ無かったので仕方ない措置ともいえますが、イゼット天啓との相性の悪かったデッキが見直されたり、新デッキの登場といった動きがありましたので禁止カード指定は成功だったとは思います。
そして『神河:輝ける世界』がリリースされ、現時点でスタンダード環境に影響を与えたのは以下のカードです。
瞬速を持ち出たターンならインスタントタイミングで忠誠度能力が使用できる稀有なプレインズウォーカーであり、前例がないので見た目の強さがイマイチ伝わりにくいですが、使用してみると思ったよりも隙がなく対処がしにくいです。
相手ターンの戦闘中以降にプレイすれば忠誠度能力を2回は使用できることになります。
忠誠度マイナスの能力はいずれも《放浪皇》自体を守る手段となりますので生き残りやすいというのも強さの秘訣。
使用する度、使用される度に強さを実感するカードです。
《マグマ・オパス》デッキを成立させたキーカード。
単体だけでも強いのでコンボパーツを引かない時でも活躍できるのが強み。
他にもキーカードはありますがエンチャントのコスト軽減により「ナヤルーン」といったデッキを生み出した立役者。
絆魂が対ビートダウンとのライフレースで有利になるのも利点。
《皇国の地、永岩城》を始めとした伝説土地サイクル
土地枠に呪文の役割を持たせる伝説土地で、複数枚は入れにくいですがアンタップインしますし効果も強力。
また、魂力という対処がしにくい起動型能力のためケアするのが難しい点も強さの一つといえます。
禁止カードによる影響と神河の強力なカードを得て、新環境は何が正解なのか読めない状態でした。
2.調整段階
色々なデッキを試しては解体するといったことをある程度繰り返しましたが、相手に使用されて強かったある1枚のカードに注目していました。
緑単アグロに入っており《群れ率いの人狼》から搭乗して攻撃してくるなど強い動きをしていました。
全体除去の耐性もあるためアグロデッキに入れる分には強そうだなと感じていました。
《不詳の安息地》を失った白単に入れて試してみるか。
と思ったのがきっかけで何回か回してみると悪くないことに気付きます。
最初の構築では2枚程度をメインに採用していましたが、オルゾフ系のコントロールが使用する《ドゥームスカール》《食肉鉤虐殺事件》の返しに搭乗させて攻撃させたり、ソーサリー除去が効かない点は禁止された《不詳の安息地》を彷彿させる程の活躍で、攻め手が無くなってもドロー可能なので序盤だけでなく中盤以降も息が長く戦える白単となりました。
使用する度に採用枚数が増えていき結果的にメインに4枚採用。
MTGアリーナで行われていたスタンダードチャレンジを7-0,6-1といった良い成績を出すことが出来ました。
この時点では日本選手権ファイナルは白単アグロ&《勢団の銀行破り》で決まり!と思っていました。
3.《勢団の銀行破り》の解雇
Crokeyz Kamigawa: Neon Dynasty Tournament
-- Nage (@mtgnage) February 20, 2022
スタンダード/参加者585人
1位 ジェスカイコンボ
2位 エスパーミッド
3位 エスパーPW
4位 オルゾフコン
5位 ジェスカイコン
6位 オルゾフコン
7位 オルゾフコン
8位 オルゾフコンhttps://t.co/oWzYl2ads1 pic.twitter.com/MVQWRnH6gV
大会結果を確認するとオルゾフが高い勝率を出しており日本選手権はオルゾフがメタられるだろうと考えていました。
また、単色アグロは《不詳の安息地》を失ったので対策が薄くなるであろうという点もあり、白単アグロはメタゲーム的に悪くない位置にいました。
このままの形で調整すれば本戦も勝てるだろうと思っていたところ、同じく日本選手権ファイナルに出場予定の簗瀬さんから良いデッキがないかとの声があり、調整中の白単アグロを提案。
使用感を共有してくれたところ《勢団の銀行破り》がデッキに合っていないとまさかの回答。
高い勝率に貢献してくれたカードなので「何かの間違いなのでは?」とも思いましたが、先日イゼットドラゴンや日向オパスが使用する《削剥》《プリズマリの命令》についでのように破壊されたことを思い出しました。
イゼット系デッキは日本選手権ファイナルの上位メタに食い込むことはほぼ間違いないですし、特にイゼットドラゴンマスターである高橋優太選手は間違いなく使用すると予想されていたので大会全体のイゼット系デッキは多くなるだろうメタゲームを考慮した結果、活躍していたカードでしたが泣く泣く採用を諦めました。
《傑士の神、レーデイン/Reidane, God of the Worthy》
《勇敢な姿勢/Valorous Stance》
《這い回るやせ地/Crawling Barrens》
また上記3種類のカードも追加した方が良さそうとの意見がありメインに採用。
後述しますが《粗暴な聖戦士》《スカイクレイブの亡霊》の枚数についても意見があり、最後まで迷いましたが「ナヤルーン」に対して強い《粗暴な聖戦士》を4枚にすることにしてデッキ登録。
あとは祈るのみです。
4.白単アグロの構成について
使用した白単アグロの構成について解説します。
土地
24枚の土地
従来の白単アグロは22~23枚程度が一般的ですがそれよりも多めに採用しています。
これは《放浪皇》や《剛胆な敵対者》といった多くのマナが必要なカードが増えたことで4マナまで欲しいためです。
単純に土地を増やすだけではマナフラッドを起こしてしまいがちなのでマナの使い道として《フロスト・ドラゴンの洞窟》や《這い回るやせ地》を採用しています。
《フロスト・ドラゴンの洞窟/Cave of the Frost Dragon》
飛行という回避能力が非常に良く、残り数点分のライフを削ってくれる大事な土地です。
出来れば4枚取りたいところですがタップインによる展開の阻害はなるべく避けたいので3枚に抑えています。
《這い回るやせ地/Crawling Barrens》
《不詳の安息地》とは比較できないくらい弱く、回避能力もなく起動コストも大きいので非常に使い辛いですがそれでも《平地》よりは強いという印象。
《放浪皇》や《ガーディアン・オヴ・フェイス》を構えたが結果的に何もプレイしないターンなどに起動しておくといった場面が多少はあり、6/6くらいまで育てれば活躍が見込めますのでそんなに悪くはありません。(強くもありません)
無色土地による色マナが出ないということは運良くありませんでしたが、今後使用するのであれば2枚程度に抑えた方が良いかもしれません。
《皇国の地、永岩城/Eiganjo, Seat of the Empire》
土地でありながら除去としても使用できる便利な土地。ただし伝説なので複数枚の採用が難しいカードです。
除去枚数が限られるビートダウンデッキだと2枚以上は欲しいところで、3枚はやはり多過ぎて土地が伸ばせなくなることもあったので2枚が適正枚数だと考えます。
コスト軽減も《スレイベンの守護者、サリア》《傑士の神、レーデイン》《輝かしい聖戦士、エーデリン》と入っているので結構2マナ以下で起動できることも多いです。
クリーチャー
《堕ちたる者の案内者/Usher of the Fallen》
パワー2の時点でかなり強力なクリーチャーで、特に攻撃回数が多くなる先手番で活躍します。
起動型能力もマリガン後の手札が少ない場面などでは起動の機会も多いですし、後手番の2ターン目に《ジュワー島の撹乱》ケアで2マナカードをプレイしないで能力起動もよくあります。
タフネス2という《棘平原の危険》で倒されない点が特に重要で、後手番の相手《山》の返しに出すクリーチャーとしては最高となります。
訓練により中盤以降でも無視できないサイズに育っていくので中盤以降は《堕ちたる者の案内者》よりも強いです。
強力なエンチャントも環境に増えているので能力起動の機会も多めです。
一応、大量にマナは必要になりますが《這い回るやせ地》をクリーチャー化しておくことで+1/+1カウンターを取り除けるようになります。
幸いにしてそのような場面に至った経験はありませんが、活躍の機会があったなら提案元の簗瀬さんに感謝してください。
白の2マナ最強クリーチャーの一つで、放置すればするほど自軍が強化されていきます。
初期タフネス1が一番の欠点ですが能力の強さに比べれば気にならない程に強力なクリーチャーです。
《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》
白の2マナ最強クリーチャーその2。
レガシー環境でも活躍するカードがスタンダードで弱い訳がありません。
環境の非クリーチャーデッキに対する解答であり、戦闘面でも先制攻撃が強力。
伝説というデメリットを差し引いても3~4枚は採用したいです。
全体強化付きのクリーチャー。特にアグロ同型で活躍します。
基本的に追加マナを支払うので4マナ以上のカード扱いですが、2ターン目に他のカードがプレイできない場合は出すこともあります。
妨害兼ハイスペックな能力を持つ最強の3マナクリーチャーその1。
次にプレイされるであろうカードを追放することでテンポを取ることも出来ますし、プレイされたら困る全体除去のようなカードを指定するのも悪くありません。
何より相手の手札を見て今後の展開の予想がしやすくなるのでゲームプランを立てやすくなります。
《輝かしい聖戦士、エーデリン/Adeline, Resplendent Cathar》
最強の3マナクリーチャーその2。
対処されなければあっという間にトークンと本体でゲームを決めてしまいます。
伝説で無ければ4枚採用したい程には強力なカードです。
《傑士の神、レーデイン/Reidane, God of the Worthy》
イゼットの《予想外の授かり物》やオルゾフの《放浪皇》《蜘蛛の女王、ロルス》辺りを重くする役割。
特に《放浪皇》に対しては警戒があるので、プレイされたとしてもマイナス能力で除去されないのは地味な強みです。
アドバンテージを得られる強力なクリーチャー。
打点が高くて消耗戦にも強く、白単にとって数少ないアドバンテージを得られるカードです。
メイン1枚、サイド3枚が定番ですが、メイン2、サイド2でも良さそうなので構成が難しい。
また、サイド後に引きやすくなるようにメインに1枚追加してメイン2、サイド2とすることが多いです。
クリーチャー以外の呪文
とても強力なプレインズウォーカーで戦闘面がとても楽になります。
《スレイベンの守護者、サリア》と相性が悪いのは事実ですが、それを差し引いても強力。
当初は2枚くらいが妥当と思っていましたが戦況を逆転出来る強さがあるので調整するたびに増えていき、現状は4枚で問題ないと思っています。
守り兼除去という便利なカード。
特にイゼット系の《黄金架のドラゴン》《くすぶる卵》《溺神の信奉者、リーア》といった放置すると負けに直結するクリーチャーが少なからずいるため最小限除去は欲しいです。
サイドボード
《粗暴な聖戦士/Brutal Cathar》
《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》
一時的にパーマネントを除去出来るクリーチャーで、それぞれ対象や範囲も異なりますが使用感は基本同じで、
主にクリーチャーデッキに対してサイドインします。
本大会では「ナヤルーン」をメタって《粗暴な聖戦士》を4枚としていますが、白単アグロのような同型が多いと予想するなら同型の追放合戦に強い《スカイクレイブの亡霊》を4枚にした方が良いです。
能力でサイドから持ってくる役割なのでサイドインすることはありませんが、除去が多いデッキ、飛行クロックが効くデッキ、攻め手が多く欲しい相手には1枚サイドインすることを考慮しましょう。
《ガーディアン・オヴ・フェイス/Guardian of Faith》
ビートダウンデッキの天敵となる《食肉鉤虐殺事件》《家の焼き払い》といった全体除去を回避できる有能なクリーチャー。
クリーチャーでありながら《勇敢な姿勢》のようなインスタントの役割も持てるためとても便利。
今回のようなデッキリスト公開では1枚以上は採用しておくことで対戦相手はプレイが難しくなるでしょう。
ただし、ビートダウンで3マナを構えるというタイミングはとても難しく
あまりにも顕著だと対戦相手に気付かれてしまいますので押し引きがとても重要です。
追加の除去で、イゼット系が多いと予想したのでサイドに追加で採用しました。
《冥途灯りの行進/March of Otherworldly Light》
万能な追放除去で、プレインズウォーカー以外なら基本追放することができます。
同型のミシュラ土地を追放してもよいですし、オルゾフの置物系にも干渉可能なので器用なカードです。
5.サイドボードプラン
vsイゼットドラゴン
out
4《剛胆な敵対者/Intrepid Adversary》
in
1《軍団の天使/Legion Angel》
2《ガーディアン・オヴ・フェイス/Guardian of Faith》
1《勇敢な姿勢/Valorous Stance》
序盤は《棘平原の危険》《ジュワー島の撹乱》に気を付けながら展開していきます。
ただし、アドバンテージを取り始める展開になると次第に負けてしまうので長引く程不利となります。
ある程度はリスクを負ってフルタップでプレイする必要もありますので、有利不利な状況なのか考えてプレイしましょう。
構成次第ですがメインは比較的有利で、サイド後は相手の無駄カードが無くなるので五分くらいとなります。
vsオルゾフミッドレンジ・エスパーフレンズ
out
4《剛胆な敵対者/Intrepid Adversary》
2《勇敢な姿勢/Valorous Stance》
2《放浪皇/The Wandering Emperor》
in
1《軍団の天使/Legion Angel》
3《ガーディアン・オヴ・フェイス/Guardian of Faith》
3《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》
1《冥途灯りの行進/March of Otherworldly Light》
除去をケアしたサイドをします。
追放除去がメインでありタフネス4以上のクリーチャーがほぼ皆無なので《勇敢な姿勢》は抜きます。
《婚礼の発表》といった置物系カードが多いですし《よろめく怪異》などの死亡時誘発クリーチャーはとても邪魔なので、除去されてしまうのは仕方ないですが《スカイクレイブの亡霊》《冥途灯りの行進》は追加します。
vs白単アグロ
out
4《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》
4《精鋭呪文縛り/Elite Spellbinder》
2《傑士の神、レーデイン/Reidane, God of the Worthy》
in
4《粗暴な聖戦士/Brutal Cathar》
3《スカイクレイブの亡霊/Skyclave Apparition》
1《軍団の天使/Legion Angel》
1《勇敢な姿勢/Valorous Stance》
1《冥途灯りの行進/March of Otherworldly Light》
サイドから除去をすべて投入します。
《勇敢な姿勢》を抜くのではなくむしろ追加するのは意外と思うかもしれませんが、白同型のゲームを決めるカードは《光輝王の野心家》でタフネスは次第に膨らみますので大体倒せる時が来ます。
普通に破壊不能モードも強く無駄にならないので是非試してみてください。
《放浪皇》で相手のクリーチャーを強化してから倒すプランも一応覚えておくと役に立つかもしれません。
攻め手が欲しいので《軍団の天使》も追加します。
6.大会結果
R1 〇 イゼット
R2 〇 ボロスアグロ
R3 〇 イゼット
R4 〇 白単アグロ
R5 〇 エスパーフレンズ
R6 × エスパーフレンズ
1位抜け
SE1 〇 ゴルガリミッド
SE2 〇 ボロスアグロ
SE3 〇 エスパーフレンズ
大会を通して引きが強く、タイミングの良いところで一番欲しいカードを引けることが多くとても運が良かったです。
また、メタゲームブレイクダウンでも純粋なオルゾフデッキは0人で、アグロ系統への対策が薄かった点も勝因の一つでしょう。
7.終わりに
日本選手権2021FINALは優勝という最高の結果となりました。
自身の目標としてはトップ8辺りを目指していただけに、いきなりの優勝は実感が湧きませんがとても嬉しいです。
以前から情報交換や調整に付き合ってもらっている簗瀬さん、斉田さんにはとても感謝していますので、
次は二人が勝てるように応援すると共に、自身も偶々運が良かっただけのプレイヤーにならないよう
今後も勝ち続けることを目指して頑張っていきます。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
また次回勝った時にお会いできればと思います。