2015/01/22 森を護る者 - Card of the Day -今日の1枚-
タグ:Card of the Day, ジャッジメント, 森を護る者森を護る者/Sylvan Safekeeper
「インビテーショナル97」を知る人は最古参を名乗って良い。もう開催されなくなって久しいインビテーショナルというイベントの記念すべき第1回である。その名の通り世界中から招待されたプレイヤーが、複合フォーマットで戦い強豪の中で頂点を目指す__今の世界選手権に近いトーナメントであった。そんな大会を優勝したのはスウェーデンのオーレ・ラーデ(Olle Råde)。初代インビテーショナル王者である彼は、初代Player of the Yearでもある。そしてアメリカ人以外で初の・同時に当時の最年少PT王者である。要するに、手がつけられないバケモノだったのだ。美しい長髪から貴公子と形容されていたが、兵役を機に坊主頭になったりして話題になった(スウェーデンの兵役の義務は現在は撤廃されている)。
インビテーショナルと言えば、その優勝副賞でご存知の方もいるだろう。カードをデザインし、それが調整を重ねた末に自身の顔・姿が描かれたカードとして実際に製品化されるという、マジックの歴史に物としてその名を残すことが出来る特権である。この副賞は第1回の際には設けられていなかった。そのため、ラーデはこの特権を後年に受け取ることになる。優勝してから5年後に発売されるセットに収録されるカードをデザインするに至ったのだ。そういった経緯でラーデがデザインしたのは、インビテーショナル・カードの中でも最軽量の1マナクリーチャーだった。《森を護る者》である。
1マナ1/1、戦闘面では頼りないが、その能力で戦線を支えるTHE システムクリーチャー。《森》を1枚生け贄に捧げることで、クリーチャー1体に被覆を与える、「守護ウィーク」にて語るに相応しい1枚である。自身は打撃力はないが、横にいるワームやビーストが生き延びれば勝負を決められるのが緑という色。臭い匂いは元から…とこの守護者自身に除去を撃っても、自身もその能力で護ってしまうためなかなかに凶悪。《森》の枚数と除去の枚数のチキンレースが始まってしまうことも考えて、安定して《森》が供給されるシステムを作ろう。白緑のシステムクリーチャー満載ビート「マーベリック」や、瞬殺コンボ「ハルクフラッシュ」においてスリヴァー達のお守りに採用されるという形で、レガシーにおいて活躍した。かつてのスタンダードでは、見た目はエルフなのにウィザードであり(オデッセイ・ブロックではエルフが登場しないため)、その点でカードパワーに見合わない出場機会となっていた。後に人間のタイプを獲得。
「森を護る」存在が《森》をバンバン生け贄に捧げるってどういうこと?と思ってしまうかもしれないが、これは「森の」という書き方がどうしても森そのものを指しているように思えるため。この「森の」は「森に住む・森における」というニュアンスであり、「森の平和を護る者」と考えるのが良いだろう。
巨大な蜘蛛に乗った姿も印象的だ。これは「バグバインド」というデッキを駆りPTコロンバス96で優勝した彼へのリスペクトの表れだろう。激渋クリーチャー《巨大トタテグモ》を活躍させ、蜘蛛という構築であまり見ない存在へ光を当てた彼の功績を讃えたものだ。