野生の末裔/Scion of the Wild

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Card of the Day -今日の1枚- 2015/05/23

野生の末裔/Scion of the Wild

野生の末裔/Scion of the Wild

野生の末裔/Scion of the Wild

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 生きるということは、何かを過去にしていくこと。朝日と共に目覚めることで、今日だった日を昨日にする。命あるものを肉塊とし、それを噛み砕き己の血肉へと変える。子どもだった自身を、子の親へと変えていく。知らなかったこと知り、届かなかったものを手に入れる。大袈裟に言えば進化、一歩一歩進んでいく。全ては過去。

 

マジックだってそうだ。このゲームは、概念的生命体、生きている。日々、うつりゆくメタゲーム、規模が拡がりゆくプレイ人口・トーナメント。そして___カードデザイン。

 

《野生の末裔》は『モダンマスターズ2015年版』に再録された際に、レアリティが降格されたことで話題となった。それも、二段階だ。レアがアンコモンに・神話レアがレアに、そんなことは今までもザラにあった。一部の構築ではパッとしないカードにとっては、再録されるということはそういうことでもある。レアだった今日が二度と帰れない遥か彼方の昨日となる。それが、この《野生の末裔》の場合、レアリティ最下層まで真っ逆さまだ。こんな例は、なかなか見られない。過去になり過ぎ。

 

そもそも、このカードには前身がいる。《狩りの統率者》という『メルカディアン・マスクス』のレアカードだ。末裔と同じく緑の3マナで、シングルシンボル。クリーチャータイプを選んで、戦場にいるそれの数だけのパワー/タフネスを持つ。これは対戦相手の戦場もカウントするが、対戦相手とデッキの主軸の部族が被る確率って一体どんなもんよ。というわけで、純粋に自軍のクリーチャーの数だけのサイズを誇る末裔の方が、往々にして上回っているのだ。また、色は変わるが《ケルドの大将軍》も同様の能力を持っていたが、3マナである(大将軍は4マナ)・壁もカウントする(大将軍は壁をカウントしない)・何よりクリーチャーを並べるのが得意な緑という色、これらの理由で大きく上回っている。という訳で、彼も誰かを過去にして生きてきたのである。

 

そして『基本セット2013』で、遂に自分にお鉢が回ってくるのである。《オドリックの十字軍》という、アンコモンに差をつけられてしまう。全く同じ能力を持つクリーチャーが自身よりも格下のレアリティで登場。向こうは白であるが、シングルシンボルだ。そして、白は当時トークン生成に長けていたため、実は緑よりもこの能力を活かせる、ときたものである。ただ、当時は全くネタにならなかった。何故なら、《オドリックの十字軍》自体も構築では活躍することはなかったし、そもそも皆、末裔の存在を忘れているかそもそも知らなかったのだ。

 

彼にとって、『モダンマスターズ2015年版』という目立つ舞台で降格を晒されるのは悲劇だったのかというと、僕は全くそうは思わない。この出来事で皆がこのカードの存在を思い出し、あるいは知ることになった。よく出るレアリティになったというのも、リミテッド観点で言えば素晴らしいことだ。おそらくは3か所同時GPでは大暴れすることになるだろう。皆の手元に、過去から蘇りし野生の魂が訪れんことを。


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