2015.07.02 text by Ishida Hiroshi
クリーチャー除去。
黒というカラーに与えられた最大の役割の一つであり、死を司る黒のイメージを決定づける要素でもあります。
今回は基本に立ち返り、この黒の除去の歴史を語っていきます。
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・最古の除去 |
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《恐怖》。このカードこそ、現代にまで続く黒除去のカードデザインの基本です。
サイズに関係なく、どんなクリーチャーでも一撃で墓地へと送ってしまう......このタイプの除去は"確定除去"と呼ばれ、過去から現在に至るまでクリーチャー除去の基本にして最高峰としてデザインされ続けています。 僅かなマナでどんなクリーチャーをも対処できるのですから、当然強力なカードです。トーナメントでもよく見られました。
この《恐怖》もそうですが、古の黒の確定除去カードには面白い味付けがなされています。 それは、黒の確定除去カードでは、黒のクリーチャーやアーティファクト・クリーチャーを対象に取れない、という事です。 恐怖自体を糧とする黒の生物に、恐怖による精神攻撃が効かないのは当然の話。アーティファクト・クリーチャーに関してはそもそも心が無いでしょうから、恐怖が効かないのも当然です。
この制約はフレーバー的にも優れていますが、ゲームにも大きな影響があり、黒のクリーチャーはただ黒である、それだけで除去耐性があるとされるようになります。 これは構築戦において、クリーチャー選定に大きく関わってくるようになります。
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・除去と除去耐性の歴史
さて、古のトーナメントシーンは、この《恐怖》以上に強力な除去カードとして《剣を鍬に》と《稲妻》がブイブイ言わせていた環境でした。 |
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これらの除去を受けないという理由で、『ホームランド』が擁する《イーサンの影》は最高峰の除去耐性を持つクリーチャーと評価されていました。
ですが、あまりに強すぎるカードは消えていく運命。『第四版』を最後に《剣を鍬に》と《稲妻》はスタンダードから姿を消し(《稲妻》だけは永らく後に還ってきましたね)、単体除去としては黒のカードが最も優秀となり、よく使われるようになっていきます。
こうなると、前述した通り「黒のクリーチャーには効かない」という制限により、黒のクリーチャーの除去耐性がより注目されるようになっていきます。 「5CG(5 Color Green)」という5色のグッドスタッフデッキ(※)では《デレロー》がアタッカーとして選択されていました。 |
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どのカラーからでも好きなカードを選べる「5CG」において、除去耐性という観点から黒い生物が選ばれたのです(真のメインアタッカーは《マロー》でしたが......)。 (※編:グッドスタッフ=良いとこどり。特に3色以上のデッキに用いられる用語で、いろんな色のそれぞれ優秀な部分を多色土地により運用するデッキを指す。「5CG」は緑を中心とした5色デッキ。そのマナベースは《森》8、5色土地9、《極楽鳥》4と今では考えられない色んな意味ですごいものだったりした。) |
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こうして、強力だが完璧ではない(特定の相手には効かない)というデザインが、実際にデッキに採用する際に選択肢を発生させ、よりデッキ構築やメタゲームを面白いものにしました。 その背景には、この《恐怖》系統の除去カードがトーナメントシーンで頻繁に使われていた事実があります。初心者でもわかりやすく、無難に1:1交換が取れますからね。歴史が進むと、そもそも除去カードを受け付けない"被覆"生物がフィニッシャーとして注目されます。 あの「青い悪魔」の伝説は、こうして幕を開けたのです。 |
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・確定除去カードの変遷
このような、強さと同時に弱みもある《恐怖》型の確定除去は黒の除去の基本とされ、エキスパンションが進むごとに新型の亜種が次々と生み出されました。 最も古い亜種は《闇への追放》。心があろうが無かろうが闇へ追放してしまうという事で、アーティファクト・クリーチャーでもお構いなしに除去できますが、そもそも闇の住人である黒生物にはやっぱり効きません。こうして考えるとフレーバー的にも良く出来たカードですよね。 |
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ただ1マナ重くなってしまったので、トーナメントシーンでは微妙なカードです。
こうした恐怖型の除去は基本的なカードということで、各ブロックでのテーマやメカニズムと組まされての亜種が多くデザインされていく事になります。
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テンペスト・ブロックのバイバック能力を持ち、1枚で複数回使用できる《屠殺》
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ウルザ・ブロックのサイクリング付きで腐ることがない《抹殺》
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マスクス・ブロックではピッチスペルとして、マナ無しで唱えられる《殺し》
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インベイジョン・ブロックではキッカーを持つ《苦悶の死》、また分割カードの《悪意+敵意》
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オンスロート・ブロックでは黒の主要部族・ゾンビとシナジーのある《残酷な蘇生》
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ミラディン・ブロックでは久しぶりに《恐怖》が再録となりましたが、アーティファクト・クリーチャーが跋扈するこの環境では皮肉の効いた再録でした。
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神河ブロックではスピリットに関係する《肉体の奪取》《霊魂の奪取》や、秘儀・連携を持つ《崩老卑の囁き》
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時のらせん・ブロックでは色々なカードが有りますが、注目は契約サイクルの0マナ除去《殺戮の契約》
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ローウィン・ブロックでは部族推しのセットらしく、エルフ以外という制約付きの《眼腐りの終焉》
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アラーラ・ブロックでは5つのテーマの1つ、有色アーティファクトである《処刑人の薬包》
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ミラディンの傷跡・ブロックでは、《闇への追放》とは逆にアーティファクトには効かない《喉首狙い》が出ました。これは黒の確定除去なのに黒に通じるという強力な除去カードでしたが、環境的に万能ではなく面白いデザインになっています。
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イニストラード・ブロックでは黒の主要部族である怪物達には通用しない《夜の犠牲》
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ラブニカの回帰・ブロックでは多色には効かない単色専門殺し《究極の価格》
などなどなど...... 根っこは基本的なカードですから、それぞれのセットのメカニズムに組み込みやすいんでしょうね。 ブロックごとの特色を上手く取り込んだアレンジがなされた、様々な《恐怖》の末裔がデザインされていきます。
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・黒除去カードに起きた「革命」!?
これら《恐怖》系統カードは、初代から引き継いだ「どんなサイズのクリーチャーでも一撃で倒せるが、特定条件の相手には効かない」という絶妙なデザインが施されています。
ですが、長いMTGの歴史の中で、黒除去であっても何の制限もなく、何でも除去できるようなカードも現れました。
その最初の革命を起こしたのは、インベイジョン・ブロックの第2エキスパンション、『プレーンシフト』の1枚です。 「多色カードは露骨に強力にすべき!」という多色至上デザインの中で、真の万能除去が生み出されました。
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それが《終止》です。
わずか2マナのインスタントで、どんなクリーチャーも対処できるこのカードは、まさに確定除去界の革命。 当時のトーナメントシーンでは赤や黒へのプロテクションを持つカードも少なくなかったので、そうした面々に効かないという欠点はありますが、それを差し置いても破格の効果です。
このカードを皮切りに、黒の呪文であっても黒のクリーチャーに効く確定除去カードが次第にデザインされていくようになります。
前述した《恐怖》系除去でも、《肉体の奪取》や《眼腐りの終焉》などは、多くの黒のクリーチャーに通じます。 《喉首狙い》は、黒のクリーチャーにも通じる確定除去としてかなり万能なデザインがされています。《夜の犠牲》や《究極の価格》も、かなり使いやすく強力です。
また《終止》同様、多色化すればより高パワーなデザインが施され、《化膿》や《屈辱》と言った多色カードは《終止》に勝るとも劣らぬパワーを持つ強力な除去カードでした。 |
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最近では《終止》の直属の末裔とも言える《戦慄掘り》や、素晴らしい万能除去カードである《突然の衰微》も出ましたね。
ですが、やはりこれは多色化したゆえのデザインで、黒単色の除去ではありません。 黒単色の除去は、やはりある程度の「死角」を持たされていたのですが......
真の革命は、予想外にも基本セットで訪れました。
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《殺害》
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このカードのテキストは、あの《終止》とほぼ変わりません(再生禁止は、メタゲームにもよりますが最近はそこまで重要な要素ではありませんからね)。 ダブルシンボルとはいえコモンで、何の条件もない3マナの確定除去とは、当時驚いたのを覚えています。もちろん3マナというのは構築では軽くはないので、当時のスタンダードでは《喉首狙い》などの2マナ除去の方が優先されましたが...しかし、このデザイン自体は特筆すべきものだったのです。少なくとも、黒除去の進化の歴史に立ち会ってきた自分にとってはそうでした。
このカードの登場は黒単色の確定除去が、あらゆる制約を跳ね除けた瞬間だったのです! ただやはり強力すぎたのか、これ以降再録はされていません。ダブルシンボルとは言え3マナでノーリスクの確定除去がコモンというのは、リミテッドではあまりにも強すぎましたからね。 その後登場した《肉は塵に》もコモンで無条件の確定除去ですが5マナになっています。このぐらいのパワーバランスが、リミテッドの確定除去としては妥当でしょう。
さて、今もスタンダードで使用されているテーロス・ブロックでは、ついに、この《殺害》の完全上位互換までもが登場しました。
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《英雄の破滅》
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単純な単体除去でありながらレアカードとして設定されたこの呪文は、しかし、あまりにも強力でした。
対象がクリーチャーだけでなくプレインズウォーカーにまで拡大され、しかもその条件は何もありません。先ほど紹介した《戦慄堀り》は他色のソーサリーだったのに対して、これは単色のインスタントですから、使いやすさは段違いです。 「除去カードばかり抱えて指をくわえたままプレインズウォーカー1枚に蹂躙されるしか無い......」という黒系コントロールの弱点も、これ1枚で解消されました。 メタゲームやデッキ構築にも大きく関わるインパクトがあり、他の色を足さなくてもこれだけでプレインズウォーカーに対処でき、しかもクリーチャー除去としての性能も高いので無理なく採用できる。 この存在によって黒単色のデッキや、青黒のコントロールデッキも環境に存在を許され、またプレインズウォーカー1枚によるイージーウィンは難しくなりました。
また続くタルキール・ブロックでも、制限無視の強力な除去カードが登場しました。 探査能力持ちのカードとしてデザインされた《残忍な切断》ですが、これも無条件でどんなクリーチャーでも除去できる強力なカードです。
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たとえ探査がなかったとしても《肉は塵に》相当ですからね。コストを2、3マナ安くしただけでも十分に仕事をするものです。スタンダードでもよく見る、使い勝手の良いカードですね。
個人的な意見ですが、やはり《英雄の破滅》はやり過ぎというか、強すぎるデザインだと思います。 カードパワーの高いプレインズウォーカーとのバランスを取るためにデザインされたカードだとは思いますし、やっていることは一対一の取引に過ぎないので地味ですが、あまりにも万能すぎるというか......
やはり《恐怖》との付き合いが長いと、何らかの制約があったほうが黒らしいと感じてしまいますね(笑)
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・リミテッドにおける黒除去の変遷
さて、好きなだけ強力なカードを積み込める構築戦であってもお呼びがかかる《恐怖》系除去ですが、限られた駒を用いるリミテッドでも当然強力です。 クリーチャー戦が主体となり、1枚でゲームを決めかねない「ボム」クリーチャーに対処するためにも、リミテッドにおける除去の重要性は構築戦よりも上だとさえ言えます。 僅かなマナでどんな生物にも対処できる《恐怖》系除去は、当然極めて強力です。 黒の確定除去は様々なリミテッド環境でトップコモンの1つとして数えられ、ドラフトでは安定の初手としてピックされ、またシールドでは《恐怖》系除去のためさけに黒をタッチするのも基本戦略でした。
ですが、リミテッド環境において、《恐怖》はあまりにも強力すぎました。
確定でボムクリーチャーを除去してしまえて、遅いデッキでも速いデッキでも採用できしかも強力、どんなデッキが相手でもほぼ腐らず、タッチしてでも入れたい...... こんなカードがコモンに存在するのは、少しバランスが悪かったわけです。
また、近年のMTGはクリーチャー同士の殴り合いを重視させるようデザインされていて、年々クリーチャーは高性能になっていきますが、反面スペルは重く、弱くするようになっていっています。 特にコモンカードにおいてこの方向性は顕著で、高性能な除去カードはアンコモン以上にするような指針になっています。
この流れの中で黒の確定除去もどんどん重くなり、また軽いものは高レアリティになっていきました。
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例えば、『基本セット2010』ではコモンだった(そして当然、トップコモンの1枚だった)《破滅の刃》も、『基本セット2014』ではアンコモンになっていますからね。そしてコモンの確定除去枠は《血の儀式文》という重いカードになっています。
個人的にはこの変更は望むところで、特にドラフトでは顕著なんですが、《恐怖》系のシングルシンボル確定除去は、黒をやっていない人にも摘まれてしまうんですよね。シングルシンボルだとタッチが容易なので無駄ピックになりづらく、また自分で使わなかった場合でもカットとして、相手に使われないのであればそれはそれで有力なアクションとなります。
こうなると黒をガッツリやっている人(そうだよ、俺だよ!)の旨味が減ってしまって......。 その点でも『基本セット2013』の《殺害》は革命的でした。ダブルシンボルなのでタッチが難しく、容易にピック出来ません。その上であの手軽さ・強力さですから、もうピックできた時の嬉しさと言ったらなかったです。 まぁ『基本セット2013』の黒はコモンがやたら強くて好印象というのもありますが(笑)。 |
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・もうひとつの除去の華、「生贄」系除去
さて、制限はあるものの対象を取って確実に葬り去る《恐怖》系除去と並び、今では黒の代名詞となっているタイプの除去が、この「生贄」系除去。 「布告」系除去とも呼ばれますが、それはこのタイプの除去の元祖である《悪魔の布告》に由来します。
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基本的に"生け贄"というのは呪文や能力のコストか、誘発型能力により要求される維持費として、自身に向けて使われることが殆どでしたので、この呪文のシステムは極めてシンプルなのに斬新なものでした。
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正確には《葬列》や《悪疫》などのほうが登場は早いのですが、これらのカードはもっと他の効果が目につくので、やはりシンプルな除去としては《悪魔の布告》のほうが代表的でしょう。
このタイプの除去には、《恐怖》系と較べて良い点もあるが劣っている点もあり、これも面白い比較・選択ができるものになっています。
メリットとしては、クリーチャーを対象に取っていない事。これによりプロテクション(黒)や呪禁、破壊不能であったとしても除去できます。
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当然、《恐怖》のように黒クリーチャー相手であっても関係ありません。 特に除去耐性を持つクリーチャーでも問答無用で倒せるのは非常に強力で、恐怖系除去を回避するために選択したクリーチャーでも、こちらの布告系除去で挟み撃ちにしてしまえます。 どんなクリーチャーが相手であっても確実に一対一で交換できて無駄にならないというのは、他のタイプの除去にはないメリットです。デメリットはそのままメリットの裏返しで、対象を取れない事です。 つまり相手は一番不要な生物を生贄にしてしまえばいいので、複数のクリーチャーが並んでいる場合には本当に倒したいクリーチャーが除去できません。 特にクリーチャーのよく並ぶトークン系のデッキなどにはほとんど意味がない事もあります。
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この弱点は他の除去と組み合わせることでカバーすることが出来ます。 要は相手の生物が一体だけなら絶対的な除去効果を発揮できるので、他にも除去を満載したデッキなら便利に使うことが出来ます。このメリットとデメリットはなんとも悩ましいところで、構築においてはメタゲームもよく考えて選ぶ必要があり、それもまた面白いところです。 一方、リミテッドでは基本的に生物が並ぶのでデメリットのほうが大きく出てしまい、恐怖系除去と比べると劣る印象ですが、それでも絶対に一対一で取引できる除去カードには違いありません。十分有力なカードです。
生贄系の除去は恐怖系の除去と比べると歴史は浅いですが、その特異性から構築戦でもよく採用が見られます。
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現在のスタンダードでも、《龍王オジュタイ》や怪物化した《羊毛鬣のライオン》なんかを除去できる《忌呪の発動》《自傷疵》はメタゲームの都合でよく見られますし、少し前ですと《ヴィズコーパの血男爵》を除去するための《肉貪り》はよく使われていました。
カードパワーが強烈なレガシー環境でも「バントオーダー」や「Show and Tell」が叩きつけてくる《大祖始》や《引き裂かれし永劫、エムラクール》を除去できるという理由で布告系除去が使われていたこともありますし、僅か1マナで確実に1対1交換を取れるという点から黒単色系のデッキで《無垢の血》もよく使われています。
この布告系除去の究極形は、やはり《ヴェールのリリアナ》でしょう。
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どのフォーマットでも引く手数多、もはや《精神を刻む者、ジェイス》を越えプレインズウォーカーの中でも最強じゃないかという活躍っぷりですが、そりゃマナ不要で《悪魔の布告》を、しかも上手く行けば何発も打てるなんて強いに決まってますね。
布告系の弱みである「相手にクリーチャーの余裕があって選択肢があると弱い」という点も、リリアナは自分である程度克服してしまっています。複数回の起動で相手のリソースを根こそぎにしてしまいますから、そもそも相手に選択肢がなくなっていくんですよね。 やはりリリアナ様の強さは素晴らしい!
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・リミテッドの基本?マイナス修正系除去
「対象のクリーチャーに-X/-Xの修正を与える」タイプの除去も、黒の特徴です。 このタイプの弱体化系呪文は、相手の力を奪い衰弱させる暗黒魔法らしいフレーバーを持ち、恐怖と並んで最初期からデザインされています。 エンチャントであったり、ソーサリー、インスタントであったり、デザインの幅はなかなか広いです。
ですがゲーム的にはあまり強くはなく、基本的には確定除去のほうが優先されます。確定除去が「確定」除去と呼ばれる所以は、これらのマイナス修正を与える除去が不確定であるから、です。自分が除去したいクリーチャーと修正値が果たして噛み合うかというと、常にそうではないですからね。
もっともその「弱さ」がリミテッド的にはちょうどバランスが良く、コモンカードでもよくデザインされています。 基本的にタフネスをマイナスしてそのまま除去してしまうためのカードですが、リミテッドではコンバットトリックの一端としても使えます。例えば5/5のアタッカーを3/3でブロック、そこに-3/-3修正を投げれば...3/3が死ぬことはなく、5/5を討ち取れますね。その点では、赤の除去である直接ダメージ呪文よりも優れていると言えます。あれらではクリーチャーのパワーが下がることがないため、ブロッカーと呪文の2枚を消費してしまいます。
結局リミテッドとはその名の通り、限られた呪文で戦わざるをえないフォーマットです。そんな環境では不確定なマイナス修正除去でも使わざるを得ない......むしろ使いこなして、不確定を確定にしてこそのリミテッド。そう考えると、他の除去よりも奥深いカテゴリーかもしれません。
基本的にはやや弱めのデザインであるマイナス修正除去ですが、マナ効率の面で強力なカードも時折出現し、そうしたカードは構築で使われることもあります。 何よりも軽さが魅力の「黒い《ショック》」こと《見栄え損ない》や、追加効果が嬉しい《胆汁病》などがありますが、中でも一番有名なのは《四肢切断》でしょう。
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プレイに黒マナさえ必要なく、ライフを支払えば僅か1マナでプレイでき、しかもその除去範囲はタフネス5まで葬れると、かなりのものです。こうなると実質確定除去ですね。 このカードのせいで存在を許されなかったクリーチャーもたくさんいました。 そう......同じ黒でも......同じ『新たなるファイレクシア』を築きし同志でも......! |
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・究極の除去、リセットカード!
細々としたもの1つ1つに対処をするのではなく、1枚で場をリセットしてしまう全体除去カードは、いつだって強力なものです。 「除去のチャンピオン」とも言うべき存在ですが、この役目はMTGでは基本的に白のものになっています。 黒の全体除去と言えば《黒死病》や《虐殺》などの不確定なもので、《神の怒り》のような確定全体除去は長らく存在していなかったのです。
ですが次元の混乱で、まさしく黒い《神の怒り》である《滅び》が登場します。 このカードのインパクトは凄まじく、当時のプレビューページですごく興奮したのを覚えています。
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白い神の怒りが黒く染まり滅びとなる、その衝撃といったらありませんでした! イラストと言いカード名といい非常に厨二......いやカッコよく、もう「滅び去れ!」「闇に呑まれよ!」とでも言いながら使いたくなるのも当然です。 ちなみに、対となる《神の怒り》は光の爆発で生けるものを消し飛ばしているイラストですが、《滅び》は万物が暗黒空間に吸い込まれるようなイラストになっています。これはそれぞれのプロモーション・カードでも同様です。 |
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カードのテキストはまったく同じ両者ですが、こういう部分でも色の違いが見られて面白いですね。
現在のスタンダードでは黒の全体除去である《命運の核心》がよく見受けられます。
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これはほぼ確定除去でありながら、モードを選ぶ事で敵にだけ損害を与えられたり、あるいは上手く全体除去が出来なかったり......と、黒らしい選択制の悩みがあって面白いカードです。 とはいえ基本的には5マナの全体除去呪文、先輩である《滅び》と比べても遜色ない強さです。状況によっては上手く使うことで、先輩を上回る働きを見せることもあるでしょう。 現スタンダードはこのカードの存在により、《滅び》が使えた時期と同じように無理やり白を入れなくても全体リセットが出来るので、デッキ構築の幅も広がりました。《英雄の破滅》といい《命運の核心》といい、いや~今の黒除去ってかなり恵まれてますね!
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・闇より這い出しもの
毎回、その回のお題に合わせた黒単デッキを構築するコーナー「闇より這い出し者」。さて今回は、除去特集ですから除去デッキ......といきたいところですが、実はここまでに紹介できなかった、超強力にして黒らしい除去カードがあります。 それはどのジャンルに分類するか難しく...全体除去でもあり生贄除去でもあり、さらには手札破壊でもあり土地破壊でもあり、何よりフィニッシャーです。
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それがこのカード《死の雲》。自分が大好きなカードです。
これをメインにモダンデッキを組んでみました!
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モダン・黒単デスクラウド |