残酷な根本原理/Cruel Ultimatum
タグ:Card of the Day, Cruel Ultimatum, MTGシングル, アラーラの断片, 岩SHOW, 残酷な根本原理Card of the Day -今日の1枚- 2015/10/23
残酷な根本原理/Cruel Ultimatum
何度も言うが、プロツアーは厳しい世界だ。己のすべてを出し切っても、世界の頂点で戦う連中には簡単に跳ねのけられてしまうこともある。予選で権利を勝ち取ったプレイヤーが洗礼を浴びたということはよく耳にするが、何十大会連続で参加したプレイヤーでも事故り散らかしたり、ドラフトラウンドでボムを叩きつけられたりしてGood Gameと言わざるを得ない。
わかっちゃいるけど理不尽と言いたくなる敗北を経験するもの。相手のトップデッキに泣くことも多々ある。デッキにX枚しか入ってないのに、ここで引くのかよ!と。マジックは残酷だ。今日紹介するのは、残酷さを極めた1枚。
《残酷な根本原理》は『アラーラの断片』にて収録された5つの断片を代表する、これまでの呪文を大きく上回る効果を持ったソーサリーのサイクルである。いずれもぶっ飛んだ効果でゲームを捲るレベルのものであるが、それもそのはずコストは7マナで3色なのだ。
今日紹介する《残酷な根本原理》も青青黒黒黒赤赤とかいうぶっ飛んだマナコストの持ち主で、まあ普通に組んだデッキではプレイすることもかなわない。マナベースがしっかりしていて、かつ7マナを安心してタップすることが出来る長期戦デッキでようやく、というところ。
マジックでは基本的に大味の超大呪文はそもそも撃てない・間に合わない・撃っても負けが覆らない、とロクなものではなかった。構築においてね。なので、7マナのソーサリーが活躍するということ自体が稀。その類稀な1枚がこのカード。
何せ、得られる恩恵がとてつもない。対戦相手はクリーチャーを1体生け贄にささげ、こちらは墓地からクリーチャーを1枚手札に戻す。対戦相手は3枚カードを捨て、こちらは3枚カードを引く。
対戦相手は5点のライフを失い、こちらは5点のライフを得る。なんやこれ?枚数だけでも、対戦相手は4枚損して、こちらは3枚得をする。このリソースの差を活かすターンを作り出せる、5点のライフを得られるのが素晴らしい。消耗戦の末にこんなん撃たれたら失神する。
根本原理シリーズは、イラストにその断片を代表する主人公キャラクター=ぷレインズウォーカーが描かれ、彼らの能力や特性・思想などが伝わる背景世界を重視した呪文となっていた。
『アラーラの断片』のタイミングでは、唯一青赤黒の断片・グリクシスに該当するプレインズウォーカーのみが未登場であった。このカードにも、打ちのめされたデーモンとそれに対面する大きな影のみが描かれており、この人物は誰なのか?と話題になったものだ。
後に、日本語版のカード名流出事件で《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス》の文字を見た時、世界中のプレイヤーが「なるほどなぁ」と合点がいったものだ。ラスボスの使用する呪文に相応しい強力無比な呪文である。
プロツアー京都2009では、会場で大スクリーンに決勝ラウンドの試合模様が映し出されていた。勿論参加権利もなく、サイドイベントや買い物を楽しんでいた僕は、ある試合の中継に目が行き、歩を止めた。
絶体絶命の状況下、引いて良いカードはこれしかない、と言わんばかりにドロー前に土地をタップし青青黒黒黒赤赤マナを出すジェスチャーをするプレイヤー。トップをくるりと捲ると...そこには、対戦相手にとってただただ残酷な現実が待っていたのだった。
この劇的なトップデックを果たしたGabriel Nassifは、この《残酷な根本原理》を撃ちまくり、自身初のプロツアー個人戦優勝の栄冠を手にしたのだった。あの瞬間場内に響いた、阿鼻叫喚とも歓声ともとれる「Ohhhhhhhhhh!」を忘れることはないだろう。