「日本ヴィンテージ選手権2015 Autumn」決勝 伊勢知弘vs赤木崇晃

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「日本ヴィンテージ選手権2015 Autumn」決勝 伊勢知弘vs赤木崇晃 text by Seigo Nishikawa いよいよだ。ヴィンテージとしてはやや珍しいトータル7回戦という長丁場を潜り抜け、最後に残った二人のプレイヤー。一方は予選2位の伊勢知弘。いま一方は、予選4位で決勝進出を果たした赤木崇晃。 伊勢と赤木は予選ラウンドでも対戦しており、他の大会でも幾度か当たっているとの事で、お互いのデッキは知り尽くしている模様。「ジェイスコントロール」(本人談)を操る伊勢に対し、赤木は《ゴブリンの放火砲》を中心としたコンボデッキ。それだけに両者共に初手の7枚の選択が大事になる。尚、予選では赤木が見事に勝利を飾っており、伊勢にとっては借りを返す機会がすぐにやってきた形となる。 DSC_0193 Game1 予選上位の伊勢が先手を選択し、《溢れかえる岸辺》《Mox Jet》《太陽の指輪》そして《Ancestral Recall》。これを《Force of Will》で返す赤木。 赤木は返す刀で《Mox Sapphire》《金属モックス》(《Elvish Spirit Guide》を刻印)《太陽の指輪》。最後の1枚は伊勢の《精神的つまづき》の前に阻まれる。 お互い妥協無しのつばぜり合い。 伊勢、続くターンに《思案》すると、それは《Tundra》《噴出》《定業》。この妨害手段が無い3枚に大いに悩むが、最終的に《Tundra》をセットしてターンエンド。伊勢には《精神的つまづき》があるものの、確定カウンターは無く、赤木の仕掛けによっては対応しきれない状況となる。 赤木、《生ける願い》で《トレイリアのアカデミー》を確保すると《厳かなモノリス》と繋げ、次のターンに決める構えを見せる。 伊勢は先に見えた《噴出》、そしてあらかじめ埋みだしておいたマナで《知識の渇望》を使用。まだ対策手段は見えない。土地が残り1枚になってしまうことを一瞬躊躇するも、妨害手段がないのであれば土地の枚数など意味は無い。ならばと《瞬唱の魔道士》で、先に打ち消された《Ancestral Recall》を再利用。 赤木にターンが返る。ここで赤木はまず《定業》。これは躓くも、満を持して《記憶の壺》。だが伊勢は、先の《Ancestral Recall》で見事に引き入れていた《Black Lotus》と《マナ漏出》で弾き返す。 これに「よし!」と喜びの感情をあらわにする伊勢。気合を込めて《精神を刻む者、ジェイス》を送り出す。赤木のライブラリートップに眠るのは《生ける願い》。赤木のサイドボードに眠る何かを想像し、これまでの対戦を思い出し、考え抜いた伊勢はその状態の維持を宣言。 その《生ける願い》を見て腕組みをする赤木。結果それを《カルドーサの鍛冶場主》へと変換した。 こうなると天秤はやや伊勢へと傾いたか。《精神を刻む者、ジェイス》は伊勢に《Force of Will》と《師範の占い独楽》を授ける。伊勢が磐石の状態を作り上げはじめる。 それでも一発逆転が可能なのが赤木のデッキだ。伊勢の手札の枚数を確認すると、まずは《定業》で揺さぶりをかけるが、これも《精神的つまづき》。要所要所で、赤木の足が止められる。 赤木と伊勢のハンドの枚数が大きく離れていく。《瞬唱の魔道士》にリミットをかけられている赤木は溢れんばかりの伊勢の手札を乗り越えられるだけの弾丸を用意するだけの時間が無い。 《精神を刻む者、ジェイス》で自身の《瞬唱の魔道士》を手札に返した伊勢は、《時を越えた探索/Dig Through Time》を墓地から使用し、さらにライブラリーを深く掘り進めて行く。 3枚の《Force of Will》に加え、《摩耗/損耗》まで確保すると、遂に赤木のライブラリーに手をかける。伊勢は完全に場を支配し、それを受けてトップに残される赤木のカード。それでも最後の一撃までは、と粘る赤来であるが、この状況を覆すことは最早不可能であった。 伊勢 1-0 赤木 Game2 お互いに土地がない7枚をキープする。だが、そうはいっても両者のそれは大きく違う 赤木は《土地譲渡》で手札を公開し、《Force of Will》《Mox Jet》《定業》《Elvish Spirit Guide》《Ancestral Recall》《修繕》という強烈な手札を見せつけ、《Tropical Island》をセットする。 DSC_0205 一方の伊勢は《Mox Sapphire》《Mox Pearl》《摩耗/損耗》《定業》《Force of Will》《精神を刻む者、ジェイス》《修繕》でゲームを開始している。こちらも決して弱くは無いのだが、それ以上に赤木の手札が強烈だ。 赤木は《Ancestral Recall》、お互いの《Force of Will》が飛び交った結果、新しくもたらされた3枚は《Mox Ruby》と《Mana Crypt》。その2枚に少しのけぞる伊勢。それでもMoxが青でなかったことだけは幸い、赤木は《修繕》をこのターンには打てない。 伊勢は見事土地を引き込むと、青白両Moxを置き《定業》をキャスト。赤木に必死に追いすがる。 だが2ターン目を迎えた赤来は一切の逡巡も見せずに《修繕》、《Mana Crypt》を《ゴブリンの放火砲》へと変え、《Elvish Spirit Guide》を手札から追放する。マナ能力であるため伊勢がこれに割り込みをかける術は無い。 《ゴブリンの放火砲》が解決される。 赤木「では全部見てください」 伊勢は赤木に渡されたライブラリーに土地が無いことを確認すると、「はい」と一言。サイドインされたと思われるカードを記憶し、3戦目の戦い方を描きつつ、ライブラリーを赤木に返すことで投了の証とした。 繰り広げられたターンは僅かに2つ。しかしそこにあったのは、実に濃密な攻防。 伊勢 1-1 赤木 Game3 泣いても笑ってもこれがヴィンテージ日本選手権2015 Autumnの最終ゲーム。ここを突破したプレイヤーには王者の栄光が待っている。 伊勢は、《鋳塊かじり》《仕組まれた爆薬》2枚というサイドカードを引くものの土地が《Tundra》2枚というかみ合わない手札。これを嫌ってマリガン。 一方の赤来はもたらされた7枚を手に考え込む。 DSC_0209 《不同の力線》 《不同の力線》 《土地譲渡》 《定業》 《Mana Crypt》 《厳かなモノリス》 《ゴブリンの放火砲》 それでも《不同の力線》でターンエンドに勝負を仕掛ける手段をプランニングし、この7枚を受け入れる。 1マリガンの伊勢、《Volcanic Island》《Mox Sapphire》《Mox Ruby》、そして《Ancestral Recall》と、マリガンなんて無かったといわんばかりのロケットスタート。消耗したはずの手札を一気に回復すると、続けて《Mox Jet》までセットし、1ターン目にして場には4枚のマナソースを並べる。 このタイミングで《ゴブリンの放火砲/Goblin Charbelcher》着地も狙えたが、全ての行動をインスタントタイミングで動くことが可能な赤木は、伊勢のカウンターを警戒して何もせずエンド。 伊勢がドローした《知識の渇望》をそのまま唱えると、これに割り込むことで安全に《Mana Crypt》と《厳かなモノリス》を場に設置する赤木。 伊勢は《Tundra》をセットして2マナを立てると《定業》。するとそこに見えるのが《Black Lotus》と《精神を刻む者、ジェイス》。無事次のターンが得ることができれば、伊勢はある程度安全に《精神を刻む者、ジェイス》を送り出すことができそうだ。 祈るようにターンを渡す伊勢、その思いが通じたか赤木はアクションを起こさない。 予定通り《Black Lotus》から《精神を刻む者、ジェイス》を出すと、その《渦まく知識》能力にスタックされて飛び出してくる赤木の《記憶の壺》。しかし伊勢の《Force of Will》に阻まれてしまうと、ジェイスの見せる3枚が《噴出》《渦まく知識》《師範の占い独楽》と実に強力な組み合わせ。 赤木が《記憶の壺》を出すために《厳かなモノリス》をタップしたのを見た伊勢は《仕組まれた爆薬》をX=0でセットし、即座にこれに火をつける。自身のMox3枚を巻き込んででも、赤木から《Mana Crypt》を奪い取り、赤木が動くための行動源を奪い取る。 ここで赤木長考。《Elvish Spirit Guide》から《通電式キー》とするのだが、ここには伊勢の《精神的つまづき》。Game1から要所要所で《精神的つまづき》がその力を存分に見せ付ける。 伊勢は《鋳塊かじり》を見つけると、タップ状態のモノリスまでも破壊し、赤木の場は《不同の力線》2枚のみという状態に逆戻り。 そして《精神を刻む者、ジェイス》が遂に赤木の精神をに手をかける。赤木より先に伊勢が赤木の未来を見始める。赤木の精神が刻まれる。伊勢は《師範の占い独楽》をも追加し、手札をカウンターで満載にしていく。 それでもGame1とは異なり、赤木の手札も十分な枚数がある。どこかに逆転の糸道は無いか。 ジェイスの忠誠度が7,9と積み重なる。その間ライブラリートップに残され続けるカード。赤木はディスカードを選択せざるを得ない。 DSC_0203 ジェイスクロックは11へ。ここで見えた《Mox Emerald》を、伊勢は少し考えるがライブラリーの底へ。赤木は遂に伊勢の知らない1枚をその手に。だが赤木は動けない。 遂にジェイスの忠誠度は13となる。その1枚もライブラリーの下だ。祈るように最後のドローをする赤木。そのカードを見た赤木は、静かにそして淡々と「エンド」。 "6"と書かれた二つのダイスを取り除く伊勢。それに対する赤木のアクションは……無い。 伊勢 2-1 赤木   ヴィンテージ選手権2015 Autumn 優勝は、伊勢 知弘! DSC_0223