【GP名古屋2016】レガシー選手権 Round4 杉中 俊哉(神奈川) 対 長谷川 貴司(愛知)
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グランプリ・名古屋2016 レガシー選手権 Round4 杉中 俊哉(神奈川) 対 長谷川 貴司(愛知)
Text by 森安 元希 勝ち。勝ち。そして、勝ち。全体の1/8にしか許されていない、3戦全勝同士で迎えた中盤戦第4ラウンド。 大きく遅れることもなく、開始より丁度3時間。人によっては少し緊張が解け、人によって程よい疲労が溜まる頃だ。 杉中 対 長谷川は互いに白と青を使わないマッチアップとなった。 杉中 俊哉。 クイックインタビュー記事では、周りの仲間たちと昔から親しみ深くレガシーに接していることが感じられる。 杉中が今回選んだデッキは、ジャンド。ハンデスと除去からの軽量クロックを展開する様から、レガシーのTierデッキのなかでも、肯定的にフェアデッキと評される数少ないアーキタイプだ。 《血編み髪のエルフ》と《闇の腹心》によるカードアドバンテージの確保はもちろん、《罰する火》と《燃え柳の木立》のエンジンは完成すると他の生物デッキを一切受け付けない強さを誇る。 《死儀礼のシャーマン》ともども、モダンでさえ破格の強さと禁止を受けている一式だ。 長谷川 貴司。 ここ愛知を地元と記す長谷川は赤緑の《雲上の座》デッキ、ポストだ。 ポストには《交易所》まで採用してアーティファクトに寄せた形(12ポスト)もあるが、今回は『ゲートウォッチの誓い』で得た幾らかのカードを採用している意欲作だ。遂に彼らの出番が訪れた。 Game 1 杉中 俊哉(神奈川) 対 長谷川 貴司(愛知) 杉中、《樹木茂る山麓》から《Badland》、《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》とテンポ良く展開していく。 長谷川も《雲上の座》からの《雲上の座》と準備に取り掛かるが―…しかし1枚目の《雲上の座》はマナを出す前に、《不毛の大地》に追いやられてしまう。 神の土地をも枯れ地にしてしまうこの土地もまた、レガシーの代名詞だ。 このままジャンドの杉中がゲームペースを握っていくかと思われたが、《Maze of Ith》で唯一のアタッカーである《闇の腹心》が受け止められると、ダメージソースが《死儀礼のシャーマン》のスペルを食べる"死儀礼ビーム"しかない。 時折挟まれる《微光地》のゲインが大きい。それでも杉中は《稲妻》、《罰する火》を勢い良く本体へ投げていき、極大とも言えるポストのビッグアクションが決まる前にライフを0にしてしまいたい。 軽いカードで構成されることが殆どのレガシーデッキにおいて、1枚で複数のアドバンテージを稼ぐ重量級を採用するポストに対する、信念を持ったプレイングだ。 長谷川が引き込んだパーマネントは、まずは『ゲートウォッチの誓い』より第一陣、《難題の予見者》。 だがすでに杉中のハンドは空で、そのプレッシャーはむしろ除去されつつドローされる危険性を持つマイナスの要素さえ生んでいた。ここで軽く、長谷川に1番目の能力のテキストを確認する杉中。 杉中「(1番目)追放して、で、(2番目)戦場を離れたらそちら(長谷川)がカードを引く、ですね」 長谷川「(2番目)そちら(杉中)、ですね。引くの」 実際、英語版の《難題の予見者》は比較的テキストが長い。新しい能力をピックアップして読み込んでいくと、この手の勘違いは起こり得やすい。 《罰する火》+《燃え柳の木立ち》エンジンを既に完成させている杉中、《難題の予見者》という大サイズのブロッカーの上から残り数点を削り切る。 第1ゲーム、エルドラージの脅威は顔見せ程度に終わった。 杉中 1-0 長谷川 Game 2 《Candelabra of Tawons》が戦場に設置されたことが、開始の合図となった。 2マナ以上を生み出す土地との強烈なシナジーからポストの他にHigh Tideのようなデッキでも採用されている、《Candelabra of Tawons》。土地の広がり方次第では、早々に2桁のマナを生み出す、破壊的なまでのマナ加速装置だ。 しかしそこに待ったをかける杉中。《不毛の大地》、《Hymn to Tourach》で土地2枚を落としていく。 これには「キツい」とハッキリ声をもらす長谷川。《Candelabra of Tawons》自身は、土地の枚数が確保されて初めてマナ加速を約束する。それでも《師範の占い独楽》を設置して、一息つけるか。 長谷川、《雲上の座》、《雲上の座》、《雲上の座》。怒涛の3連続セットランド。 しかし杉中も《不毛の大地》、《不毛の大地》で凌いでいく。 互いに限られたマナの中での小回りの良さは、ジャンドの得意とするところだ。杉中も動き慣れたように《闇の腹心》や《死儀礼のシャーマン》を展開していく。長谷川のブロッカーとして展開された《難題の予見者》は《ヴェールのリリアナ》で対処できるはずだが、《Maze of Ith》で攻撃をしばられている4/5《タルモゴイフ》で睨み合わせ続けている。 アタックを介さず《罰する火》によってのみ、少しずつ、だが確実に長谷川のライフを蝕んでいく。 ―…ラスト、ライフ2。ここから殆どターンを渡せば負けのところから、長谷川が引いたのは、《原始のタイタン》。 サーチは《微光地》2枚。《雲上の座》《Vesuva(雲上の座)》2枚と合わせて、8点ゲイン。ライフを10にまで戻して更にはアタックにも抑止力をかけていく。今度は一転、杉中が考える番となった。 《ヴェールのリリアナ》の奥義によっても杉中の攻勢を防ぎきれない。 2体目の《死儀礼のシャーマン》を並べたところで、こちらも『ゲートウォッチの誓い』より新カード《コジレックの帰還》が重なり、盤面が流されてしまう。比較的新セットの影響が少ないレガシーにおいて、2種類の新カードが同時に採用されるということは珍しい。 普段とは異なるプレイング・考え方を要求されざるを得ない受け手側が受け方を損なうのを否定する者はいない。 それでも《燃え柳の木立ち》2枚を経て2回ずつ繰り返される《罰する火》によって、いよいよ長谷川のライフは1。 今度は―…長谷川、なんとここで3種類目となる『ゲートウォッチの誓い』の新戦力にして大本命、《大いなる歪み、コジレック》にたどりつく。《時の逆転》を巻き起こしたかのようなセブン・ドロー。 杉中、7枚のカウンターを乗り越えて、この1点を削る手立てが、なかった。 杉中 1-1 長谷川 Game 3 《古きものの遺恨》によって《真髄の針》と、《探検の地図》を割り、再びポスト・システムを機能不全に陥らせようと考える杉中。長谷川も《コジレックの帰還》で《死儀礼のシャーマン》1体を流す。 これまで、ポストはマナ加速かエンドカードか、あるいは《真髄の針》のような妨害かの三種類で構成されていることがほとんどであった。 Game 1で顔を見せていた《難題の予見者》を、今度はテンポ良く4ターン目、5ターン目と連続して並べて、2枚のカードを奪い取りながらライフにプレッシャーをかけていく。 ハンデスとミッドレンジクラスの戦力を同時に得たことは、ポストが今まで苦手としていた範囲を一気に減らしたことを意味する。 事実、ハンデスと土地破壊両方を兼ねるジャンドに対してはこれまで、決して相性が良いというようなマッチアップではなかった。しかし今日、今回。《難題の予見者》が杉中のライフを速やかに奪い切り、その相性表に一言物言いをつけてみせた。 杉中 1-2 長谷川 長谷川 Win! 勝ち。勝ち。そして、勝ち。更に、勝ち。121人トーナメントにおいても、4勝全勝となると1/16の数人しかいない。 長谷川がそのうちの一人となったことは、ポストを新しいカードによって進化させてみせたことの証左だ。《難題の予見者》《コジレックの帰還》そして《大いなる歪み、コジレック》。 スタンダードやモダンにおいてはその評価は既に高いが、レガシーにおいてもメタに食い込む力強さを見せつけた。 おそらくは次戦を勝つことで、残りをIDしてシングルエリミネーションが見えてくる分水嶺となってくる。 ゲーム終了後、杉中にGame2で《ヴェールのリリアナ》で《難題の予見者》を除去しなかった理由を聞いた。 長谷川の説明を受けても、戦場を離れたとき「そちら(コントローラー)」がカードを引くという意味だと継続して受け取っていた。確かに、言葉の額面上だけでは少しわかりずらくなってしまった説明のやりとりであったのかもしれない。 見ていた限りではお互いのやり取りに恣意性や悪意はなく、小さなコミュニケーションエラーであったのだろう。 特にゲーム中に新しいカードを読む上では、考えていることも多く文字が入りにくいことがあるかもしれない。 普段よりももう少しだけ慎重になるべく心がけよう。 グランプリ・名古屋2016 サイドイベントカバレージページに戻る
Text by 森安 元希 勝ち。勝ち。そして、勝ち。全体の1/8にしか許されていない、3戦全勝同士で迎えた中盤戦第4ラウンド。 大きく遅れることもなく、開始より丁度3時間。人によっては少し緊張が解け、人によって程よい疲労が溜まる頃だ。 杉中 対 長谷川は互いに白と青を使わないマッチアップとなった。 杉中 俊哉。 クイックインタビュー記事では、周りの仲間たちと昔から親しみ深くレガシーに接していることが感じられる。 杉中が今回選んだデッキは、ジャンド。ハンデスと除去からの軽量クロックを展開する様から、レガシーのTierデッキのなかでも、肯定的にフェアデッキと評される数少ないアーキタイプだ。 《血編み髪のエルフ》と《闇の腹心》によるカードアドバンテージの確保はもちろん、《罰する火》と《燃え柳の木立》のエンジンは完成すると他の生物デッキを一切受け付けない強さを誇る。 《死儀礼のシャーマン》ともども、モダンでさえ破格の強さと禁止を受けている一式だ。 長谷川 貴司。 ここ愛知を地元と記す長谷川は赤緑の《雲上の座》デッキ、ポストだ。 ポストには《交易所》まで採用してアーティファクトに寄せた形(12ポスト)もあるが、今回は『ゲートウォッチの誓い』で得た幾らかのカードを採用している意欲作だ。遂に彼らの出番が訪れた。 Game 1 杉中 俊哉(神奈川) 対 長谷川 貴司(愛知) 杉中、《樹木茂る山麓》から《Badland》、《死儀礼のシャーマン》《闇の腹心》とテンポ良く展開していく。 長谷川も《雲上の座》からの《雲上の座》と準備に取り掛かるが―…しかし1枚目の《雲上の座》はマナを出す前に、《不毛の大地》に追いやられてしまう。 神の土地をも枯れ地にしてしまうこの土地もまた、レガシーの代名詞だ。 このままジャンドの杉中がゲームペースを握っていくかと思われたが、《Maze of Ith》で唯一のアタッカーである《闇の腹心》が受け止められると、ダメージソースが《死儀礼のシャーマン》のスペルを食べる"死儀礼ビーム"しかない。 時折挟まれる《微光地》のゲインが大きい。それでも杉中は《稲妻》、《罰する火》を勢い良く本体へ投げていき、極大とも言えるポストのビッグアクションが決まる前にライフを0にしてしまいたい。 軽いカードで構成されることが殆どのレガシーデッキにおいて、1枚で複数のアドバンテージを稼ぐ重量級を採用するポストに対する、信念を持ったプレイングだ。 長谷川が引き込んだパーマネントは、まずは『ゲートウォッチの誓い』より第一陣、《難題の予見者》。 だがすでに杉中のハンドは空で、そのプレッシャーはむしろ除去されつつドローされる危険性を持つマイナスの要素さえ生んでいた。ここで軽く、長谷川に1番目の能力のテキストを確認する杉中。 杉中「(1番目)追放して、で、(2番目)戦場を離れたらそちら(長谷川)がカードを引く、ですね」 長谷川「(2番目)そちら(杉中)、ですね。引くの」 実際、英語版の《難題の予見者》は比較的テキストが長い。新しい能力をピックアップして読み込んでいくと、この手の勘違いは起こり得やすい。 《罰する火》+《燃え柳の木立ち》エンジンを既に完成させている杉中、《難題の予見者》という大サイズのブロッカーの上から残り数点を削り切る。 第1ゲーム、エルドラージの脅威は顔見せ程度に終わった。 杉中 1-0 長谷川 Game 2 《Candelabra of Tawons》が戦場に設置されたことが、開始の合図となった。 2マナ以上を生み出す土地との強烈なシナジーからポストの他にHigh Tideのようなデッキでも採用されている、《Candelabra of Tawons》。土地の広がり方次第では、早々に2桁のマナを生み出す、破壊的なまでのマナ加速装置だ。 しかしそこに待ったをかける杉中。《不毛の大地》、《Hymn to Tourach》で土地2枚を落としていく。 これには「キツい」とハッキリ声をもらす長谷川。《Candelabra of Tawons》自身は、土地の枚数が確保されて初めてマナ加速を約束する。それでも《師範の占い独楽》を設置して、一息つけるか。 長谷川、《雲上の座》、《雲上の座》、《雲上の座》。怒涛の3連続セットランド。 しかし杉中も《不毛の大地》、《不毛の大地》で凌いでいく。 互いに限られたマナの中での小回りの良さは、ジャンドの得意とするところだ。杉中も動き慣れたように《闇の腹心》や《死儀礼のシャーマン》を展開していく。長谷川のブロッカーとして展開された《難題の予見者》は《ヴェールのリリアナ》で対処できるはずだが、《Maze of Ith》で攻撃をしばられている4/5《タルモゴイフ》で睨み合わせ続けている。 アタックを介さず《罰する火》によってのみ、少しずつ、だが確実に長谷川のライフを蝕んでいく。 ―…ラスト、ライフ2。ここから殆どターンを渡せば負けのところから、長谷川が引いたのは、《原始のタイタン》。 サーチは《微光地》2枚。《雲上の座》《Vesuva(雲上の座)》2枚と合わせて、8点ゲイン。ライフを10にまで戻して更にはアタックにも抑止力をかけていく。今度は一転、杉中が考える番となった。 《ヴェールのリリアナ》の奥義によっても杉中の攻勢を防ぎきれない。 2体目の《死儀礼のシャーマン》を並べたところで、こちらも『ゲートウォッチの誓い』より新カード《コジレックの帰還》が重なり、盤面が流されてしまう。比較的新セットの影響が少ないレガシーにおいて、2種類の新カードが同時に採用されるということは珍しい。 普段とは異なるプレイング・考え方を要求されざるを得ない受け手側が受け方を損なうのを否定する者はいない。 それでも《燃え柳の木立ち》2枚を経て2回ずつ繰り返される《罰する火》によって、いよいよ長谷川のライフは1。 今度は―…長谷川、なんとここで3種類目となる『ゲートウォッチの誓い』の新戦力にして大本命、《大いなる歪み、コジレック》にたどりつく。《時の逆転》を巻き起こしたかのようなセブン・ドロー。 杉中、7枚のカウンターを乗り越えて、この1点を削る手立てが、なかった。 杉中 1-1 長谷川 Game 3 《古きものの遺恨》によって《真髄の針》と、《探検の地図》を割り、再びポスト・システムを機能不全に陥らせようと考える杉中。長谷川も《コジレックの帰還》で《死儀礼のシャーマン》1体を流す。 これまで、ポストはマナ加速かエンドカードか、あるいは《真髄の針》のような妨害かの三種類で構成されていることがほとんどであった。 Game 1で顔を見せていた《難題の予見者》を、今度はテンポ良く4ターン目、5ターン目と連続して並べて、2枚のカードを奪い取りながらライフにプレッシャーをかけていく。 ハンデスとミッドレンジクラスの戦力を同時に得たことは、ポストが今まで苦手としていた範囲を一気に減らしたことを意味する。 事実、ハンデスと土地破壊両方を兼ねるジャンドに対してはこれまで、決して相性が良いというようなマッチアップではなかった。しかし今日、今回。《難題の予見者》が杉中のライフを速やかに奪い切り、その相性表に一言物言いをつけてみせた。 杉中 1-2 長谷川 長谷川 Win! 勝ち。勝ち。そして、勝ち。更に、勝ち。121人トーナメントにおいても、4勝全勝となると1/16の数人しかいない。 長谷川がそのうちの一人となったことは、ポストを新しいカードによって進化させてみせたことの証左だ。《難題の予見者》《コジレックの帰還》そして《大いなる歪み、コジレック》。 スタンダードやモダンにおいてはその評価は既に高いが、レガシーにおいてもメタに食い込む力強さを見せつけた。 おそらくは次戦を勝つことで、残りをIDしてシングルエリミネーションが見えてくる分水嶺となってくる。 ゲーム終了後、杉中にGame2で《ヴェールのリリアナ》で《難題の予見者》を除去しなかった理由を聞いた。 長谷川の説明を受けても、戦場を離れたとき「そちら(コントローラー)」がカードを引くという意味だと継続して受け取っていた。確かに、言葉の額面上だけでは少しわかりずらくなってしまった説明のやりとりであったのかもしれない。 見ていた限りではお互いのやり取りに恣意性や悪意はなく、小さなコミュニケーションエラーであったのだろう。 特にゲーム中に新しいカードを読む上では、考えていることも多く文字が入りにくいことがあるかもしれない。 普段よりももう少しだけ慎重になるべく心がけよう。 グランプリ・名古屋2016 サイドイベントカバレージページに戻る