BIGs 川崎慧太「グランプリ・広州2016参加レポート」

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皆さんこんにちは!BIGsの川崎です。今回はグランプリ・広州2016に参加し、TOP8に入賞出来た為、記事を書かせていただくことになりました。初めましての方は私を含むBIGsインタビュー記事がこちらにございますので、よろしければこちらをご覧ください。
それでは早速本題に入っていきましょう。

 

グランプリ・広州のフォーマットはモダン。私が以前TOP4に入賞したグランプリ・シンガポール2015からは一年以上経過しており、その間に《欠片の双子》が禁止され、それまでとまったく異なるものとして始まった2016年のモダン環境。プロツアー『ゲートウォッチの誓い』でのエルドラージデッキの隆盛、その3ヵ月後には《ウギンの目》の禁止と《祖先の幻視》及び《弱者の剣》の解禁...という一連の出来事がありました。その結果、《ウギンの目》禁止前には赤青、青白、緑赤、無色といくつものアーキタイプのあったエルドラージデッキは、マナクリーチャーによって初速を補う「バント・エルドラージ」に集約されました。

現実を砕くものA白日の下にゴルガリの墓トロール

また、『戦乱のゼンディカー』で《白日の下に》を得たことで実質的に《風景の変容》を増量しつつ、ツールボックス的なコントロールとしても振る舞えるようになった「多色風景の変容」、『イニストラードを覆う影』で《傲慢な新生子》と《秘蔵の縫合体》というキーカードを得た「発掘」。といった辺りが、1年前にはなかった新登場のデッキになります。「発掘」は少々厳しい部分もありますが、サイド戦まで含めればある程度対応できる範疇なので、いつも通り好きな「ジャンド」の調整を行います。
 

上記の環境認識を踏まえて完成したデッキがこちら。



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ほとんどのカードは説明不要の固定パーツですので、このリストの特徴に絞って解説すると以下の2点です。

 
 

➀《闇の腹心》と《残忍な剥ぎ取り》の併用

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現状の「ジャンド」は《闇の腹心》のみor《残忍な剥ぎ取り》+《未練ある魂》パッケージのいずれかを採用しているのが一般的で、この2マナ域のクリーチャーを両方採用する形はあまり見かけません。
しかし私としてはライブラリーにアクセスする方法を増やし、効果的な干渉手段を引き込むことは、「やりたいことをやった者勝ち」の環境となっているという現在のモダンで「ジャンド」が勝ち抜く上での必要条件と思い、両者とも4枚フル採用することとしました。また、「ジャンド」の負けパターンとして相手への干渉手段ばかり引いてゲームこそ長引くものの、クロックがかからずトップ勝負をしている内に相手が必要なカードを引いてしまい...というものがあり、《残忍な剥ぎ取り》には《タルモゴイフ》以外の頼れるクロックとしての働きも期待して採用しています。結果としてそのいずれも満足してくれる働きでした。

 
 

➁《オリヴィア・ヴォルダーレン》の採用と《ゲトの裏切り者、カリタス》の不採用

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これはまあ、正直に言って好みの問題ですね(笑)
カリタスは3/4絆魂というスペックだけでも十分強いのですが、1ターン目から呪文の応酬を行うモダンのゲーム速度においてカリタスが着地するころには手札に除去がない状況が多々ある点が気になった為、単体で盤面を制圧できるオリヴィアを優先しました。



また、サイドボードについては以下の通りです。

 

➀《大爆発の魔道士》

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「トロン」や「風景の変容」は勿論、それ以外の大半のコンボデッキ相手にも入れます。土地破壊による相手の展開疎外というのは干渉方法としては単純ながら、うまくいけば相手に1ターンをパスさせることもできます。相手がもたついている間に《タルモゴイフ》で殴り切りましょう。

 

➁《台所の嫌がらせ屋》

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「バーン」相手は勿論、同型のリリアナ対策や雑多なアグロデッキに対してもよく働いてくれます。丸いサイドカード。

 
 

➂《古えの遺恨》

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「親和」対策が主な役割です。単純な「親和」対策では《粉砕の嵐》もありますが、《粉砕の嵐》では相手がサイドインしてくる《思考囲い》や《呪文貫き》をかいくぐれない点、《粉砕の嵐》は専用サイドボードになってしまうのに対し、《古えの遺恨》は「トロン」などにもサイドインできる汎用性の高さがありますのでこちらを優先しています。

 
 

➃《虚空の力線》

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このカラーリングで取れる墓地対策としては最上位のものです。「発掘」及び「紅蓮術師の昇天」への対策を目的として採用しています。

 
 

➄《魂の裏切りの夜》

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「親和」や「感染」、「ソウルシスターズ」、「アブザンカンパニー」など小粒なクリーチャーで構成されているデッキはかなり多く、そういったデッキに劇的に効くので採用しています。《闇の腹心》との相性の悪さは気になりますが、概ね相手が受ける影響の方が大きい為、そこは割り切っています。



➅《窒息》、《最後のトロール,スラーン》

窒息 最後のトロール、スラーン

 

個人的に青系のデッキとのマッチングがあまり得意でないので採用しました。なお、広州の間は一度もサイドインしませんでした。笑

 
 

➆追加の《オリヴィア・ヴォルダーレン》

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メインボードの項目で説明した通りです。同型などに追加します。



スリープインを付けていなかったので当日朝も数枚の枠に悩みながら上記のリストを提出。果たして大会初日の結果は...

1,2R Bye
3R ナヤバーン ○○
4R バントエルドラージ ○○
5R ナヤバーン ×○○
6R ナヒリ入りナヤ裂け目の突破 ○○
7R アブザンカンパニー ×○×
8R 親和 ○○
9R 感染 ○○

8-1の12位で折り返しです。TOP8を狙う上では上々ですが、2日目は対戦相手も強敵揃いなので油断できません。
実際、前シーズンは8-1で折り返したグランプリが3回あったもののいずれも2日目の成績は3-3の11-4で終了してしまいTOP8には残れず悔しい思いをしています。
コンディションだけでもベストの状態で2日目に臨む為、早めに就寝します。
2日目の朝は目を覚ます為に朝風呂に入ってから会場に向かいます。グランプリはほとんど休憩も挟まずに初日9回戦を戦い、翌日の朝も早く...と疲れは蓄積するばかりですので、少しでもそれを和らげるように努めます。幸い、同行のくーやんさんに選んでもらった今回のホテルが非常に良い部屋で、疲れもあまり残らずに2日目を迎えられました。

さて2日目開始。日本のグランプリと比べれば人数も少なく、8-1の折り返しであれば2日目の成績は4-1-1で概ねトップ8に残れますので、そこを目標にします。

 
 

R10 アドグレイス ××

むかつき天使の嗜み2

1敗しかできないのに早速負け。本来は不利なマッチでもないのですが、2本とも相手の回りが完璧で20分とかからずに負けました。こちらのプレイングで干渉できる要素もなく、それゆえ精神的なダメージがないのが救いです。笑

 
 

R11 ジャンド ○○

同型戦です。以前から「ジャンド」を使っている意地で勝利です。

 
 

これで1-1。あと3勝すればプロツアー権利がほぼ確定ですので、気分としては旧制度のPTQのSEラウンドです。

 
 

R12 親和 ×○○

電結の荒廃者頭蓋囲い

1-1で迎えた最終ゲームの初手にフェッチランド2枚を含む土地3枚、《古えの遺恨》2枚、《突然の衰微》、《大爆発の魔導士》というカードが。
《血染めの月》をケアする余裕もあり、クロックがない以外は完璧な初手でそのまま勝利。

 
 

R13 感染 ○○

ぎらつかせのエルフ荒廃の工作員

ここで皆さんご存知、市川プロとマッチです。前日から常に同じ勝ち星で推移しており、お互い当たりたくないですねという話はしていたのですが...ついに当たってしまいます。
デッキ相性的にはこちらの方が有利ではありますが、PTQ準決勝でトッププロとのマッチなんて避けたいに決まっています。笑
試合自体は強化スペルを引かれていれば負け、というタイミングが何度かあったものの、引かれなかった幸運もあり勝利。

 
 

R14 SCZ ×○○

死の影強大化

とうとうPTQ決勝。上当りをしており12-1の成績の相手とマッチしました。相手は冗談半分に「今勝って次でIDしても、今IDして次で勝っても一緒だよ。」なんて言っていますがさすがにIDはできません。笑
ここまで1敗しかしていないだけあって、プレイスキルの高い相手で...3ゲームとも非常に緊張感のあるゲームが続き、50分をフルに使いきって何とか勝利。終わった後は思わず脱力してしまうほど、達成感のある勝利でした。

 
 

R15 バント撤退 ID

スタンディングを確認した結果、ID可能な成績。相手もIDを断る理由はなく無事成立。これで1年ぶりにプロツアー参加権獲得です!!!

 

当初目的のプロツアー権利獲得は達成している為、後は1勝ごとに賞金とプロポイントが増えるボーナスステージのような感覚でゲームに臨みます。

 
 

R16 ナヤバーン ××

稲妻野生のナカティル

...ここまで残っている相手が、そんな気持ちの緩みを見逃すはずもなく、あっさり敗北。正直なところR14の「SCZ」に勝ったところで集中が切れてしまっていましたね。帰りの飛行機でライフ計算をしていると、少なくとも1ゲームは勝てている計算で3ゲーム目があるはず、という結論に至りました。いやー、時間が経つほど悔しいですね!


 

ということで、今回のグランプリ・広州はTOP8へ入賞でき、プロツアー『カラデシュ』への参加権・航空券の獲得という目標は達成できた為、十分に満足しているのですが、後になって考えれば1勝するごとにプロポイントを上積みできる決勝ラウンドをふいにしてしまったのは、シルバーレベルを目指す上で非常に勿体ないことだったなという反省点もあり...ここは次回以降のグランプリで活かしたいところです。

しかし何はともあれプロツアー『カラデシュ』に参加できるのは非常に嬉しいので、同トーナメントの参加レポートを書いても恥ずかしくないくらいの成績を収められるよう頑張りたいなと、気持ちを新たにしつつ今回のレポートを締めくくりたいと思います。読んでいただいた皆さん、ありがとうございました!